Utakata
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中田満帆
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森忠明に師事。歌集「星蝕詠嘆集」、歌誌「帆(han)」発売中。現在、寄稿者募集中(連作のみ)。
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雨光るルーフの上の蟻たちが落ちてゆくなりせつなの彼方
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窓に酔う光りのひとよ特急の新開地にて乗り換えるかな
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青嵐去って一輪挿すだけの花壜がひとつ行く不明だ
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やがてまたぼくが終わろうとする夜に蝉のぬけがら一切を拒む
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免罪符なかれば奔れ かぜのなか埋もれるだろう陽のひかりまで
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なにもかもが淡いよ夏のかげろうの辻をひとりで帰る足許
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浴槽が充ちる早さで夜が凪ぐ嵐のあとの傍白を聴け
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たれゆえに叫ばんか夏草の枯るるところまで歩めるわれは
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夏の嵐 かぜにまぎれて去るひとかげを追っていまだ正体もなく
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ゆうぞらもかえすことばもなかりかな 鳥の一羽を素描したらば
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水匂う両手のなかの海さえも漣打ってやがて涸れゆく
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車すら棺の隠語 カリーナの嫉妬の一語いま燃えさかる
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桜桃の枝葉の匂い 復讐はもどり道など断じていらず
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地下鉄にゆられる少女ためいきがやがて河になり馬になる
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暴力をわれに授けし父老いる 赦さるることなきわれの頭蓋よ
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うばたまの夢が波打つ岸辺にて流木ひとつ持ちて帰らん
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やがてみな遠くなりたり老いたれて植物図鑑に記録されたり
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なみだ花たとえばきみの乳房にて流る汗など愛しくおもう
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装丁家校閲係印刷工作者の悪夢いま売りにでる
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舟に棲む かぜにゆられて語ることすべてに水の匂いが充ちて
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バス停の女生徒ひとりふりかえる鳥の一羽がわれには見えず
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胡葱のような素足でバレイする少女のひとり暗闇に声
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手に触れる温度のようにやわらかくそして悲しい現象学
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わがための墓はあらずや幼な子の両手にあふる桔梗あるのみ
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われのみがひととはぐれて歩きだす初夏の光りの匂いのなかで
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