昼下がり白レースのハンカチを見つめて思ふ白昼夢かな
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スコールが突然襲う黄昏にこのまま二度と夏が来ないで
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台風がカーブしようがもう知らん所詮貴方は変われぬおとこ
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僕たちは どんな時でも喋りすぎてしまうから さみしくなるのだ
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きんぎょに日本橋まで行く夜はフィッシュテールのスカートにする
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蝉鳴かぬファッションビルのバーゲンは「もっと変われる七日間」とぞ
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目覚めればすぐに聞こえる蟬の声 七日の命惜しまずに鳴け
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我思う 故に我あり それならば 飯食う私は ケモノになるのね
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扇風機 暑さに嫌々 首を振る 俺だけ見ろと 心で思う
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選ばれなかったものは選ぶこと知らず 桜桃をひとつぶ食べる
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月のかさ広がる空の真中には向かうへ続く隧道やあり
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別れても君の匂いが恋しくて柔軟剤を使い続ける
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文月の夜風にふわり舞う月はくらげの脚をさがしているの
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人がいくら稼いでいるかなど気にしないそれが男だたまに気になる
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ダルカリーに 合い挽き肉と鰹出汁 破戒の味を愉しんでゐる
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曖昧にただなにもかも曖昧に梵我のあわいささで散らせよ
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脱殻のセミ、亡骸のセミなどを積み重ねれば終わりゆく空
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金の話するなと父に教わったその方がいいなるべくそうしよ
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我が皮膚の下にぞひそむ バケモノを 君といたくて 鎖につなぐ
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暑くってビールうまくて飲んでって何がなんだかわからなくって
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生きてればよいことあるさ呟いて 明日の鞄の中身を詰める
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フィルター越しの空だと不鮮明 ただ星はどの目でも見えない
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復旧の見込みはみえず踏切は 帰る日ねがい一時停止で
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起き抜けは不揮発性の感情を 蝉しぐれにて共洗いする
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しき罪左右同じき文字なれど罪はいくらか偏りてあり
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美しい夢はそのまま美しくけして汚すな涙に濡れても
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死にたくて入ったカフェ プカプカと泡立つソーダの気泡は僕
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とおいとおい場所で暮らせし彼の人が必死にわたしを呼ぶ夢をみた
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嗤うのは貴女一人 もう終わったと鮮血で濡れる肩を抱きしめ
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この音はパンデミックの五秒前 さよなら交わす熱月の壁
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