カチカチと 時計は進み いつまでも 変わらぬ自分が 撮られた写真と
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「ただいま」と鸚鵡返しで抱き疲れ ままもいいかな三歳終わる
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いい天気お出かけしよとキミは言う 大丈夫俺はどこにも行かない
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好々爺 看護師さんの前でだけ 家族はむっつり 柏餅食む
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母が住む古いアパート顔出せば まずは座れとミネラル麦茶
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酒蔵の多めの試飲に舌笑ふ ほろ酔ふ初夏の緑の杉玉
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トンネルの向こうに虹が待っていたもう古希にまだ五十年ある
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床の間に一年ぶりの武者人形。飾る吾らの手の老いにけり
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今日もまた朝介護から逃げたいも妻の笑顔にさあちゃんとしろ
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ぼろぼろのぼろぼろの人生をただひたすら酒を飲む
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「もういいよ」 思い巡らす 贅沢さ まだまだ先が きっとあるはず
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誤嚥して 夢の中から 飛び起きる 微睡まどろむ今宵 スマホ片手に
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たぶん寂しいんだと思う、サボテンの棘にほっぺをくっつけてみる
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溺れてく 自慢だらけの 海の中 今日も誰かの サーフィンの音
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貧乏とハラスメントに耐えてきて生活保護がシェルターになる
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世の中は 「差別、性別」 言うけれど それは綺麗な 言葉バラの棘かも
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真面目だけが取り柄の母娘職員に「保護の手本」と褒められ泣いた
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柔らかな かりと天井そらの 白い色 一人も案外 悪くはないかも
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「死にたい」と「消えたい」気持ちは一卵性 似ているけれど少し違うから
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五七五七七で揃える短歌とは 言語パチスロなのかもしれない
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向かい風 進む我らは 耐え忍ぶ 柳のように 柔く強かに
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姫さまの結婚式に鳴り響く 嘘つき達のファンファーレ
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やわらかい生身を包む毛布には打ち明ける傷包み隠さず
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開ける窓吹き抜ける風纏わってすべてさらって悲しい空気
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戻れない過去を何度も回帰する私たちだけ感じる世界
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ユキという花屋の店主がおじさんで 訳ありなのかといつも思う
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疲れてるだなんて感じさせないでもっともらしい言葉で撫でる
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ごめんねと夜更かしをする心配は私ではなく観葉植物きみへの光
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ツツジ咲く 幼きわれが通り過ぐ 花をくわえて通学路往く
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やわらかい手触りのまま頭からやさしく覆い被さる地獄
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