春。山に 呼ばれて野生化した姉は ご飯を一口分だけ残す
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大切にすればするほど穴が空く さよならなんかで片付けないで
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ほんとはさ、本物なんて怖いから 偽物だって愛されるから
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まだ治したくない傷もあっていい今日も痛いね生きていかなきゃ
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ちふゆさん(十四歳)
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在りし日の 真夏の夢は せせらいで 西瓜を洗う 風鈴の音
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退屈が わたしを縛りて 首を絞む 見やれば爪が 伸びたままで
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バス停で 雨を凌いだ 水無月の 濡れて輝く 紫の詩集
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図書室で 初めて太宰を 読むときの 夕陽に染まった がらんとした部屋
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脇目もふらず走り来たのに横に咲くのはありふれたヒメジョオン
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無神論者なので創造主ではなく所詮は人を責めるしかない
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悲しみをリンゴとともにすりおろしレタスに和える春は青空
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雪椿 可憐な花弁の 落ちる様  新成人の 項垂れる様
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熱帯夜 ウインクをする 月を見て 蝙蝠は飛び 猫は戦慄く
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路地裏に光が射してこの夏は「ぼく」という名の冒険がある
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僕たちがペンラでつくる海もあることをあなたが知る初ライブ
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もう全て どうにでもなれ 午前四時 ここで絶えたら楽になれますか
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夜一人 バレないように泣いていた 可愛い私 今救うから
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宇宙から 見た私達は細胞で きっと理由なく生きているわ
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思春期の春に何を思おうが 私の勝手だそれが思春期
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生きようとしてしまうよな どうしても どんなにひどく絶望しても
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『遅くなる』娘からのメール CMの間父は意味なく玄関に立つ
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遅番の娘の帰り リクエストの煮込みハンバーグ温めながら
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『美味いか?』父が聞くと 『イマイチね』娘が答える 土曜ゆうべのカレー
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草花は風に揺れてるだけそれで君も傷つけほんの少しでも
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好きな人のためならギャルにも清楚にも 女の子は怪人二十面相
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生白い二の腕、首 半袖のシャツが映えるね 君は永遠の夏
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いくつものアカウント抜けたその先に 本当の君がいるはずだけど
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見覚えのある人影が駆けていく 午後の昼過ぎ、隣の市役所
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君といるこの街も悪くなかったよ ただちょっとだけ明るすぎたの
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