ロッカーは胎児の夢を見るべきかそんな事件があったりもした
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髪解き左右確認するひとの頭をたたく梅雨の先触れ
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とくべつじゃ なくてもいい、と言うだけの 確かなパンを僕は焼けない
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突然に宇宙の真理を悟るとか、よくあるらしいから気にするな
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かなしいは寄せては返す波だから 浜で一緒に満ちるの待とう
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逃げた猫さみしさよりもその様が死に物狂いでごめんごめんね
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錠剤が私を救うヒーローやしてやあなたなんかではなく
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タッパーの器とふたの大きさがいちいち合わぬわたしの運命
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軒先の番鴉や 楽しげに 本日の予定 立ててるようで
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軽やかにシジュウカラ鳴く薄明かり我転がして唸る目覚まし
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曇天に芍薬 赤き朝露の流れて 薫る土の我が庭
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夏至の太陽 漫画家が へったな絵描いて 子等笑う
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東京にとらわれてるでも好きよ 愛想のいい、ここは地獄ね
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食べきれぬケーキ 解体・冷凍す 今日はわたしの誕生日なのに
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水無月の一日となりて帳面に黒くはっきり月初の数字
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沈んでは浮いて沈んでまた少し 浮きながらはく水の輪どこへ
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百億の眼がともに見る夢ならばほぼもう現実のようなもの
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燃ゆ躑躅 一輪手折る 吸いあげた 火傷しそうなほどの蜜
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温もりの仮定法で雨宿り かじかむ手の甲消えゆく足先
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本日の死因予定をつみとった名前の毒でくすりと知らず
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いやなこと束ねて茹でたパスタでも下手くそって君は笑った
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観光バスでほろ酔い 御祈り帳に書いている 「空海の風景」
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どこにでもいけるはずなどないけれどこの頃ゆめの終わりが来ない
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意味もなく筆をとったりしてるから空振るこころ残りの週末
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「歌なんか 歌わなくてもいいんだ」 と 言ってやれたら どんなにいいか
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点であることの宿命 消滅も遍在もすることができない
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今日もまた「おやすみなさい」君にゆふ遺された明日も明後日も
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人変わり 代わりの人は 多けれど 君を忘れず さよならと言う
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夕日差し 君の髪まで 黄金色 さよならを言う 時すらなくて
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金持ちは この世を愛し 幸せに 暮らして老いる ああ君もまた
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