お疲れさん 去りゆく君のテールランプ おんなじ家に帰れりゃいいのに
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ざばざばと雨水垂らす憎き空 部活がしたいの引退目前
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希死念慮 貴慮を除けば「死ねん」だけ残るのだなと酒を飲み干す
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後悔は頑張らなかった自分宛 転送できずにまた明日あすが来る
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新卒で入った会社、くるぶしの丈のパンツを履いていく梅雨
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教えない 私の秘密飲み込んで 知らず知らずに消化しちゃえば
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目覚めたら平行世界ご案内 もう充分よ、ここはどこなの
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がらくたの身体につぎはぎの心 夜を抱えて朝を待てない
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幼子の マスクはみ出る お鼻かな 低きその鼻 いとをかしけり
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溢れ出すビールの泡も落ち着けばこんなもんかと呷る おかわり
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冷房で冷えたつま先いたずらに脇腹つつく無邪気なあなたよ
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ぎしぎしとソファの沈む音させて上に乗っては前足ふみふみ
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靴はみな双子なんだと気づいたよ血の繋がりしぼくのコンバース
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たくさんさたくさん雪玉投げてほしい急いでわたしは動物なんだ
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殺してよ……でも痛いのは嫌だなぁ、なんだ抱きしめられたいだけか
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電話するコロナ騒ぎで久しぶり無事で良かった元気な声に
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息子へとマスク作りの手縫いにて 千人針の往時思いつ
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否定語という概念をまだ知らぬとは月から降りし真白ましろな雪かな
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林檎飴に紅を灯したあの夜の縁日の終わり見つけられずに
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あと少し君の指まで3センチ 触れてしまえば終わるのだけど
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出たはずの息子が慌てて戸を開ける マスク忘れた! 嗚呼そういえば
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滑らかな 喋りなんてさ 出来なくて でもそれで良い きっと良いんだ
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今誰か 私の隣にいるのなら きっと誰かは 暇なんだろう
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吹く風に身をまかせてるコスモスは こんなにやさしくしたたかに生きる
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朝の陽はブルーベリーの実に触れてやわく揺らしつ 小鳥を誘う
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頑なな僕の心にやわらかな月がささやく わがままでいい
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忙しい 甘えたいのに 一人きり ほらまた今日も 貴方に会いたい 
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いつもより つらいと感じた そのときは 素直にやすめる 世界であれよ
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なめらかな夜をふたつに割る音で時計を鳴らす日付なる嘘
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石膏像 見つめる先に いわし雲 校舎の隅で何を思うの
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