めいていの底とうめいな瓶の底透かしてひかる非常口の灯
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すつぽりと麦わら帽子の翳にある昏きにしづみ広がる世界
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翳のなか人みな光りうごきゆく夏日の白きフイルムに流れ
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麦わらの帽子のつばをめくる風ゆき先をもう知りてゐるかな
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ワンピース袖からのぞく肩紐をそっとくぐって夏は過ぎゆく
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背後から呼ぶはわたしの亡霊かもしももしもと泣いている声
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ここにいるわたしを選び生きてゆく選ばなかったまぼろしを連れ
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あなたには龍の雲ありしたたかに雨落とす影白々と立ち
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後輩を育て続ける環境を整える気があなたにあるか
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見通しのよい地点から沈む陽を見ていたずっとこうしたかった
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変わらずに毎日きみを待つぼくを線香と花のにおいがつつむ
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炎天下はずむ足どり買ってきた君のおすすめバルサミコ酢を
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風吹かば足元そよぐ彩りのくしゃりと鳴らす秋の訪れ
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何もせぬ今日を過ごして良き日だと肯定できる自分を創りぬ
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図書館にいると聞こえる野球児の声は夏を終えていた
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夢みたい きみとふたりで待ち合わせ 明日になるのが うれしい こわい
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引き鉄を引いた瞬間 得体ない真黒きものが俺を蝕む
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冷房を最強にして毛糸編む 今はまだ夏 今はまだ夏
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巻貝の螺旋のおくの白き歌とほき日こぼし漂ひ出づる
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思ひ出の影白くして流れ来て昔のことを巻貝は吹く
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謎解きをさそふ螺旋を巻きながら貝の話は白に消ゆるや
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朝足らず 仕事の時は 長過ぎて 夜また縮む 相対性理論
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ルマンドの中に生まれた空洞が教えてくれた生きるむなしさ
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雲間からのぞくオレンジのびていく 青く塗られた大きな紙に
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「インスタで映える彼女になりたい」と中目黒から届いた葉書
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いつか来るキラキラとした一日を ゆめみている「さっさと寝よう」
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きみのこと短歌のネタにしてるのがいつバレるのか怯えるわたし
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恋人を優先するのが愛ならば自己優先は依存でしょうか
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人は皆全治数秒の傷を持ち日々を過ごしているのだと思う
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二人分 片道切符 4時間後 一人分の 片道切符
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