Utakata
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飛井衣奴
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ねこちゃんにふみふみされて着てた服ふわふわ色へ染められてにこ
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風の吹く波立つ雨後の木の下でひろがる春の海こぢんまり
9
唐突に駆け寄ってきた春さんの瞬間速度夏並みの汗
6
もう春はあちらこちらに見るけれどまだもう少し踏み切れないね
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出汁しみてほかほかの夜じんわりとからだじゅうおでんになっちゃうね
6
練り物もお肉も米も粉物もお腹にたまってえらいねえ
4
白色のはんぺんなんかしゅわしゅわで何枚だって飲めちゃうねこりゃ
6
雨上がり黒く滲んだ道道に白く
描
(
えが
)
いた水玉模様
3
トタン屋根それは海への導き手ひと足先につもる白波
5
ふた毛玉ひとり占めして寝ごと聞く三びきはいる布団ひと組
9
足の
間
(
ま
)
にぬくいかたまり猫たんぽ挟んで眠るダチん
家
(
ち
)
の夜
8
ダチん
家
(
ち
)
の猫を連れては帰られぬだから少しの毛を服に連れ
6
こうばしいまつぼっくりの味がする美味しいケーキキャラメルナッツ
6
地面から煙がのぼるせめて消せそも捨てるなよポイとタバコを
6
あまりにもはやく過ぎ去る気がつけば押し流される年の瀬に乗り
5
口まわり乾いた風で
粉
(
こ
)
吹き芋ふかす季節かペクチンと鳴く
3
紅葉ですみたいな顔で落ちているペットボトルの赤キャップたち
6
夏冬に押し挟まれて所在なきちいさいきみを見つけにいこう
11
絶対にいつか絶対行くからなまだ見ぬ猫のいるダチん
家
(
ち
)
へ
5
キイキイと声高々に揺れて鳴くぼくを飲み込む電車の継ぎ目
2
道をゆく見知らぬ人を風よけにできる背のこと嫌いではない
7
我こそは天気予報を覆す神の加護ある晴れの人なり
7
さえずりにはじめましてとあいさつす鉄の翼の渡り鳥なり
6
とうとうとやってきたとおのつき昨日まで夏ではなかったか
4
はじめての満員電車あの中で香水まとう俺が最強
4
走り出し全部避けると言う君の背を追う空の落し物たち
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手を伸ばし眼鏡を探す要領で手繰り寄せるはスマートフォンや
2
街中で聞こえる会話故郷とは違うとわかるなぜおもしろい
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遠くまで来たものだなと聞きなれぬ声あれなんて名の鳥かしら
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くびれだと思い込みたい生憎とこちらはただの段差ですがね
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