直青の空に手を伸ばす 明日には君も一歳父母も一歳
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いまのうち隠しておこう哀しみは夜の暗がりブラックホール
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金色の蝶はリボンをたずさえてページの森を舞っております
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歩くほど遠く感じる「あの場所」は本当は無い理想の死に場
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栞だけいくつもあって人生は一冊の本のはずなのにね
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雨を待ち晴れを待ってはいつまでも君に会いたい理由を探す
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気怠さはワクチン接種のせいである誰に聴かせる言い訳でもなく
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稲刈りで飛んだ花粉でアレルギー 故郷の土地に嫌われた気がして
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牛乳の白さに恋し見つめてる 君はちっとも照れないね
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気圧だか湿気か何か知らないがやたらめったら気が滅入ってね
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眠りたいわけではないがこの脳が眠たがるから眠ってやるか
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福音がいつも遠くで鳴っている街灯の消えた路地にアカシア
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あの頃は頁をめくる指だけが私を遠くへ逃してくれた
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にちじょうに非日常を重ねたらうつくしいからもう目を閉じて
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鈴虫の歌にあわせて秋風を揺らす尻尾で指揮をする猫
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呼吸すらためらいもなくうばう手が背中で迷う 雨は夜降る
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地下鉄の風に髪がなびく時大人になれた気がした東京
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夜中でも 虫の音って聞こえるんだな 不眠続きの新発見
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本当はもっとこうしてたかったの 君のパンだけ高めのバター
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労働は冷たい目線に慣れること 不適合者は息を潜めて
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曖昧な甘さに惑う桜もち 葉を剥ぐ人差し指の悲喜 
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わたしたち 令和の時代に生きていて 化石になるのを怖がっている
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燃えていく隣家の窓のすきまからカップの割れる音が聞こえる
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森の奥 沈むあなたに手をのばし 溺死したってかまわなかった
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旧友と会って交わすはワクチンと明日の天気と白髪の話
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冷凍のうどんをレンジで温めて冷水で締めて啜って溜息
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あの頃と変わらぬ君を夢に見て声もかけずに朝日を拝む
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夏休みに食べたいもの食べ切れず秋刀魚不漁のニュース届く
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鈍色の脳と空より成るうたを残らず毟り食む百舌もずになれ
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正門で君を待ちたい感情は郵便ポストに化けているのだ
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