風流顔 キメて今宵に仰ぐ月 そしてくしゃみで全部台無し
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白銀しろかねの月は黄泉路の君が御髪くし が口つたふべにに染めまし
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お勝手が集積された路地裏でしか話せないことばがあった
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おかしくて 鏡にうつる わが姿 デンタルフロスは 罪作りな奴
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靴下を履かずに眠るこれこそが春になったと言う事なのか
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「お父さん」呼ぶ気配なき一歳半 作戦変更「ほらパパですよ」
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肩凝りに苦しまされて金曜日 ストレッチ動画を猫背で視聴
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社会人になってもボール蹴る息子らの瞳はサッカー少年のまま
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復興の 応援割りを 得られぬと クレーム言うは 復興の邪魔
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揺れながら流れていった笹舟を見送るように母は手をふる
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点描に光が湾を浮かばせる 港を抱いた汽笛のこだま
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他所よそ行きをクレンジングでほどく君 一人の女性ひとが少女にもどる
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日が昇る 未来を目指し 深呼吸 いただきはすぐ 目の前のみち
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返しそびれた文庫本のページに込めた吐息は夜にほどける
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登山靴 数年ぶりに 履いてみて 山の岩場の 懐かしき春
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可愛らしい看護師さんが測るから献血したのに上がる血圧
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言い聞かす 金のかからぬ 趣味ないと また会う日まで 樋口一葉
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ミツバチはイヌノフグリの花びらにしがみつくよに蜜を求めて
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洗濯機じっと見つめる一歳児 その横顔をじっと見つめる
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卒業と入学のの春風は、こぶしの白い花を揺らして
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好きな事誰にも言わず秘めておく 踏みにじられたくないからね
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春風の ジャガイモ畑で 雑草くさを刈る 芋のためよと 雑草くさに詫びつつ
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脳内のお花畑に水をやるよくぞここまで持ち直したね
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ねこたちのアニマルセラピー 癒しパワー ゴロゴロ音は頭痛も軽減
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わすれじと瞼で写す現世うつしよ夕餉ゆうげの安らぎ幸せのとき
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飲みたいな 季節限定 缶チューハイ 春の日永に フライングして
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シューシューと 圧力鍋で 煮るおでん 構わずクークー 寝るを眺む
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増税の荒波越えてまた越えて どこが岸だか誰も知らない
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宵闇の 永遠にまばゆく 蛍さえ 短き命 散るあてもなく
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夕焼けの街の幽かな口笛もゆすりて溶かすエンジンの揺れ
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