嘘つきで捻くれ者の四月馬鹿  今日だけ正直者になるのね
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柔らかに可愛げがないと笑ったあなたの指を噛んでじゃれる
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朝焼けにカフスボタンを留める君の伏せた目蓋に落ちる光
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ゆきが降るなんて君が嘯けば たしかに桜の吹雪が舞い散る
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あの日見た流星はいま手の中であかあかとひかる 名前を呼んで
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針だって石ころだってなんだって君の代わりに飲むよ 笑えよ
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仏壇の匂いが混ざる夕飯にテレビ見ながら慣れないでいる
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ジョニー B グッドを聞けば 旅人は 遙かに遠い宇宙を知らる
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聴く曲の全てに君が焼き付いて 再生する度苦しくなった
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人知れずサンバを踊るワンルーム スマホに恋愛成就の通知
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春の太陽 春の風 春の匂い 過ぎゆく冬を惜しむは僕だけ
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シオン 無辜の羊に刺青あり豫死登録‐罰・死蘇生録
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オリジナルビアカクテルなどこしらえて パン屋のプレッツェルでひとり乾杯(母、半分くらい復活)
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iPhoneで初めて写す東郷寺しだれ桜の色香の冴えて
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ナシゴレンの上 目玉焼きの黄身とろり 夫の「おお!」を褒め言葉とす
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うそ、と君が笑えば真白のカーテン やさしき春の光をたたえて
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血の衾よりあれて父母の胎を憎しむ聖霊の目
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歯をくだくような豆菓子頂いて 母と姉妹で思案にくれる
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けだものまなこな輝りそ未だ晝なればてぞかし餌の居並ぶ夜を
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日々のこと 驚きすぎて いまさらに 四月ばかには ネタも浮かばぬ
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なぜか多目にサバ読んでいる祖父に 九十三よとツッコミ入れる
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大切なひとの大切なものを大切にすることさえできない
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卑屈だなぁもうちょい力抜きなよと過去の自分の説得力よ
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嘘にしたい世界で生きてるんだもの今日だけはやさしく騙してね
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覚えてるよ 君が覚えてないことも 鮮度の低いこの備忘録
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春の乱 汗をかきかき 散歩して 桜ながめて アイスを食べる
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待ってたよ!思わず声が出てしまう 貴女あなた短歌うたが大好きだから
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やはらかな小風たゆたう山門のしだれ桜に君想う午後
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頑なな蕾が一夜でほどけ咲く 人の心もこうであったら
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動物園 動物よりも 動物を 見ている子の顔 親は見ている
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