置き捨てた制汗剤の缶のなかあの青春の気配は残る
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無風から向かい風へと蒸し返し謀反人らは群れだちてゆく
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八十歳はちじゅうの祖母の奇声は人生の哀しみ孕む慟哭に似る
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Jジェイアイドル どこかギラギラ してないは おかされること おぞましさ知って
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久に来た息子に懐く老猫は匂い確かめ膝におさまる
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あゝ人はなぜ憎み合い殺し合う私を代わりに撃てばいいのに
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桜散る夜にわたしは一度死に遺棄されたまま土に還れず
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コンビニで「いつもの」探して手をとめて春めく今宵は香るエールで
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息子かれが戻って増えたもの 笑い・光熱費・肉料理・揚げ物・息子かれの体重
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満開の咲いた桜の花見て過ぎる 踏んだ草など気にもせず
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歩道橋をのぼると横は鉄橋で春色電車が空駆けてきた
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どん天の 春は名ばかり なごり雪 山の光る 夏の鍵穴
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彼女から 誕生日よてい日ずれたの報告に 「奇跡」を感じた 君の命日
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道路には出るな フェンスは越えるな 手をほどくな 別れようとか言うな
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オムライス食べると思い出す 好物だった、顔すら忘れた君の
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内灘の砂丘つづきて海の家荒るるに任せ烏らの声
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無為にしてショパンを聞けば次の日も頭の中でバラード響く
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すごい格好をした二人が近所の家に入って行ったコロナかねと女房が言う
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右ひだり異なる深さ 不確かな足あとつけて森へ消えゆく
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消息は決して追わずに生きましょうそれが二人の幸せのため
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ある程度煮立つてくればさし水でしづめてしがなたぎる思ひを
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肩越しにふりむけば青 耳もとに真珠の耳飾りひからせて
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糺の森の古本市にあがなひぬ『レイン・ツリーを聴く女たち』
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みみづくも濡れそぼつらむひさかたの雨音しげく聞こゆる寝覚め
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引き潮やあらはれいづる磯浜に春日を浴びて蟹とたはむる
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起き抜けの肘の痛みは夕飯の人参千切りスライサーかな
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下の子の慣らし保育は親のため?適応力に驚き寂し
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あの時の桜の根元埋めていた黄ばんだ楽譜掘りかえし
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我が子って自分の体の一部だな この歳になってつくづく思う
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東風こちかぜが春の匂いを運べどもキミの煙草が上塗りしゆく
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