水面の向こうにゆけばもう一度その睦言を聴けるのですか
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両腕は花に嵐を抱きとめて不可知の声を待ちわびている
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明け方に馬鹿らしさだけ持ち越してことばはすでにため息の底
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月へ征くあしを踏み出す影にすら若葉が芽吹く うさぎがわらう
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窓の外 冷たい雨音 春時雨 一雨ごとに 蕾ふくらせ
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わたしたち肌色ひとつで透明になる おなじ血潮をもっているのに
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花が咲くのはいつ頃だろう いにしへのみやこに咲いた花の蕾は
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ひらがなを辿る道すじ 指先で千年前のことばをなぞる
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時経ても言葉があろうはずもなく おかえりなさいに代わる花束
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前走る 軽トラのおり たぬきり こちら見つめて 「どこ行くの俺」 / ずっと見つめられて
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追いつけず横断歩道渡る孫遠く見送る祖母を見送る
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筍を 炊けといふから炊いたけど  腹持ちさせんと 唐揚げも添える
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サバを焼き 白飯を炊き 御御御付  日本に生まれて よかったわ
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毎年の弥生の歌会は挽歌にて章子を詠う涙交えて
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ためらいなく席を譲ったあの人の綺麗な横顔が眩しかった
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巡り来る三度目の月「この会の後を頼む」と短いライン置き逝く章子
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凪静か音無く漁船横切りて 春のおぼろに半島霞みぬ
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加藤秀俊著『九十歳のラブレター』に心揺さぶらる 吾も書かむか
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春先の 夜道走りし アルファード エゴの輩か 爆音漏れり
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眠れずに朝を迎えた六時過ぎ心配事は不調にさせる
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優先席、電車にあるが、人生にはないか
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人生は長いようで、短いようで、気の持ちようは逡巡する
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心の中を詠む、簡単そうで、むずかしい、頭、心、からだ、笑
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自分は、何のために働き、寝て、起きての繰り返し、そろそろゆっくりしたいね
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始発電車、なんとなく、空いてるこの時間、まずは座れて、ホッと
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この頃、生きているということは、身体の苦痛を感じることなんだなぁと
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雨降りは、多少花粉弱まり、まずはホッと
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暖かい朝、でも雨雲迫る都心、春の雨☔️に乾杯
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ひとりいて不安のゆれる君の目に 淡紅色のさくらそう映え
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原発の311の大惨事 明日の見えずに今を彷徨う
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