新緑の風吹く丘に我立ちてじっと手合わすよき月参り
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妻の外出不機嫌になる暇がある古希をするより内緒のビール
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冬物の衣服と布団の片付けで 連休中日の一日が過ぎてく
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じゃがいもに育て育てと追肥して 吾は不調よ熱中症気味
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日曜日 私の休日落ちてない カバンの中も机の中も
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みづとりの 靑葉あをばをぬけて立ちぬれば ひろぐる空に風のかをらむ
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「豪華船一度は乗ってみたいなあ」何気に息子につぶやいてみる
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折にふれ語りかけたき亡き友はライントークの最後尾にをり
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眠れぬ夜逝きし友への懺悔の念病みたる時に会わざりしこと
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ゆく春に 雨の地上ぢのへうるほさば 甘露かんろとなりて百穀ひやくこくをむす
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秋日暮れ吾に届きぬ友ののラインの文字を何度も目で追ふ
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母親の介助のときは足動く 気力の鬼になって向き合う
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眠れぬ夜ふと眠るのが惜しくなる完徹の朝寝落ちして昼
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よくもまあこんなに人がいるよな、ってくらいに人がいる街 東京
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一週間くらいじゃちっとも塞がらないピアスホールじみた喪失
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川の辺でトランペットを吹く学生 澄んだ音色が空に溶け込む
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育休が明けて娘は復帰する これから増えるぞSOS が
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スーパーで旬の入った刺身買い一人呑みする午後の極楽
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鯉のぼり五月人形衣替え今日のノルマを箇条書きする
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死ぬときに 叫ぶ言葉は決まってる 俺の過ち 許してくれよ
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春の夜に 車に轢かれし 「ねこちゃん」は 片づけられず 轢かれ続ける
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泣いて許されるとは思わない それでも溢れる 嗚咽の嵐
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言葉より涙が先にでしゃばった  やめてくれ、 もうちょい我慢してくれよ
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人間に できないことがいくつかある 一つは自分のお尻を見ること
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暑すぎて 日なたぼっこは また今度 たまらず猫も 避暑地で眠る
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「ボブが好き」 まだ信じてもいいですか 半年前の 貴方の言葉
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ねこだって ヒトとおなじく心ある わたしはそこがいとしく思う
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黒ニャンのくりくりおめめもかわいいね うちには黒猫ジジはいないけれども
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「帰ろうよ」先に誘ってくれたキミ思い出の中消えぬ優しさ
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ゆれている大気をあびる新緑がやがて灼かれるまえの輝き
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