花ざかり美しいほどせつなげな友に捧げた同期の桜は
10
咲けば散る桜はいかに思ふらむ醜く老いて残るこの身を
14
約束をするたび切り落としてたらとうとう最後の薬指まで
6
耳塚のように建てるか記念碑を恋人らから奪った釦
4
ぼってりとした膨らみを幾年か育てているがまだ生まれない
6
満開の桜の下のランドセル照れくさいのだろ変顔の孫
25
尾灯びとう切れ 気づかぬものを 気づきしは 父のたすけか ありし日のごと
15
思い出の 二人で見てた この桜 涙の筋に 貼り付く花片
20
春迎はるむかえ ニンニク、ネギが かお出して 見つけた時が 今年の家庭 菜園はじ
6
起きなさい着替えてごはん前向いて歯磨きお風呂早く寝なさい
12
「元気だよ」「気にしないでね」に隠された「寂しい」だけが伝えられない
20
花散らば何に心を慰めむわれをも共に誘へ山風
10
行く末は道分かぬまで散る花の雪踏みなづむ志賀の山越え
9
理想は高い方がいい 君がもう死に場所を決められないように
8
消えたくて 死にたくなくて 消えたくて 記憶からすっと なくなりたくて
7
桜咲き春の盛りを感ずるもあまりに暑く思考が鈍る
4
このころは行き交ふ人の衣手に都はなべて花の香ぞする
10
キミ達も伐採されてしまうのか今年が最後 桜のトンネル
10
時空すら歪めるほどのキャンバスを埋める純白 はるは束の間
10
納得をしているような素振りまで似なくていいよ 蒼白の影
5
誠実に向き合えなかった 泣かせてばかりだった 理解してなかった どれも思い出の楽しさで塗りつぶしていた
3
もう少し夏の暑さは待ってくれ 心と二の腕の準備がさ…
16
携帯の充電おわり ねこ母の充電おわらぬ しんどい午後よ
18
午睡あけ 時すでに遅し 夕飯の メニュー決まらず 短歌に逃避
11
しとしとと 降る雨空の ご機嫌は 誰がとるやら てるてる坊主
13
吉野山霞の奥に尋ねばやまだ見ぬ遠き峰の桜を
9
わが園に来鳴きしことを忘れずは花の宿貸せ深山鴬
7
おれの百一匹目をけちらしてゆきのちあめの天気予報士
3
瞬間沸騰器だってぶちこわすわよだれはあなた ごみ捨て場にはまほうのかがみ
2
敷島に殉ぜしをのこも人なりき朽ちよ爛れよと青猫の云ふ
3