翁媼おうおうが赤い揃いのニット着て 紅葉そこだけ深み増す秋
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山行きのバス待つ間の一時ひとときを ごろりと歩道に仮寝と決める
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持病にて気遣い暮らす老いの身にコロナが誘ふ黄泉路の闇へ
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ひい孫は文月五日呱呱ここの声 日の出と共にふぐりも揺れる
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忍び逢うケンジ蛍の恋明かり すげの水面にキラリと映る
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結婚後 半年と1年とで 来た猫らよ 我が子でなくて何だというのか
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揚げ物をさせたがらぬ母 心配性 ノンフライヤーが結婚祝い>8年ほど前
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古里に一人残れる友のおんな居て色々届く庄内の味
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寝ぼけ顔鏡の中のもみあげはやたら元気な白髪が跳ねる
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夢のなか小人こびととなりて 飼い猫に食われる寸前目が覚めたり
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ホムセンの 園芸の秋庭 人群れに 赤を散らすごとく 彼岸花揺れ
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あと一分もう一分と起きられず結果飛び起き時間とケンカ
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洗濯機ごみ取りフイルター猫の毛を探せどみえず君はもういない
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車椅子 座りし母の か細き肩に 思い馳せるよ 若かりし日々
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大切なひとの数だけ心配あり大切なほど不安は尽きぬ
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きりんさんのお顔が無いとクレーンを指差す孫の顔は子狸
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崩れない天気を”一円玉”という 気象用語の感性 天晴れ(あっぱれ)
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チュンチュンと 朝の挨拶 忙しなく 澄んだ空気を 小鳥とりも喜ぶ
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先々の予定が少しづつ決まり 未来への道ひらけるようで
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我ら皆その日を知らぬ死刑囚今日呼ばれるか明日呼ばれるか
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洗礼盤へ降り頻りゐる項強き民の金合歓が散りぼふ
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咳嗽に銀歯まじりぬひゑびゑと書房ゴヤより挿絵が届く
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どれくらい 頑張ったら いいんだろ 疲れた身体が 今日も泣いてる
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今宵こよい また 床の中で 勉強し 「まだ?」「まだ?」と 朝待つ私   
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やっぱりね としに勝てない この身体 病に押され 土俵際どひょうぎわなり
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うさぎねこ そんな造語をつくりたい ちま猫のおみみ やわらか大きい
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稼働する空気清浄機。 部屋は夜。 青いランプが瞼を突き刺す。
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もらいゲロの連鎖みたいな世界だよ 綺麗なものしか見たくねえのに
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そういえば よしながふみさん すごいなあ この秋のドラマ 原作ふたつも
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眼窩から零れる汁を海水にたとふることに踏んだ二の足
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