稲葉理央
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慢性的な鬱状態とパニック障害に苦しむ二十六歳。
小説も書く。
宮田愛萌特派員配下の文化部員。
暑がりなのに夏の何もかもが好き。

不器用に 器用を装う 僕の苦を 知るか知らずか 見ても見ぬふり
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あんなのに 同じ笑顔を 向けるなよ 奴より俺が 君に見合うし
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川の瀬に 素足をそっと 浸すのを 熱射予防と 僕に説く君
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雨叩く 窓に頬擦り 吐息して 曇る硝子に 指を走らせ
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君の亡き 世界は褪(あ)せて やるせなく 滲む瞼を 甲で拭いて
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或る冬の 微笑む君の 睫(まつ)の毛に ぶら下がるのは 降りる粉雪
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よく君と 目と目が合えば 逸らす日々 僕の席とは 斜めなのにね
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鳴く君の 首に残るは 赤い跡 花が咲く咲く 至るところに
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割り切れぬ 日々に日夜に 歯を軋め 前を向くのを 諦め切れぬ
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君の背に 残る歯型が 赤々と 跡を立てては 後で怒られ
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八月も 終わり近付く 晩夏光(ばんかこう) 仰ぐと目立つ 鱗雲かな
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白南風(しらはえ)の 梅雨明けた空 眩くて 君と僕とを ただ照らしてる
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夏暁(なつあけ)に ラジオ体操 挑もうと 寝起きの君の 手をさあ引いて
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酒呑まれ いつにも増して 大胆に 近付く君の 窄む唇
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艶のある 君の八重歯が はにかむと 覗くその度 僕もにやける
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讃えるに 語彙が足りぬは 僕のせい 安易に君を 比喩など出来ぬ
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枯れの葉の 海に飛び込む 君の名を 呼ぼうとするも 喉が閊(つか)えて
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君の居る 世界はこうも 愛おしく 疾(はや)る動悸に 我を忘れて
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賽(さい)を振り 出た目に文句 言う間さえ 惜しむ出先で 己を鼓舞す
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丸顔を 愛(う)いと褒めれば すぐ頬を 君は膨らめ ぷんぷん怒る
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忘れえぬ あの日の君と 汗だくの デコとデコとを ただ突き合わせ
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陽が裂いた 空の真下に ただ一人 麦わら帽子の 君が佇む
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苦に堪え 揺蕩(たゆた)う君の 言の葉が 僕の胸裂き 共に泪(なみだ)す
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愛萌氏が 飛躍その度 愛憎の 萌ゆるその度 眼がきらきらし
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白肌が 吸い付く程の 抱擁に 是も非も捨てて ただ身を委ね
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嫌(や)な世にも 君さえ居れば 幾分か 悪くはないかと 手を取り合える
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あの空に 貴方が居ると 思えると 見ててくれよと 啖呵も切れる
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向日葵を 君になぞらえ 苦楽して 垂れる頭(こうべ)は 僕に委ねて
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君の背の 斜め後ろの 席に着き 覗く鎖骨を 眺める日々よ
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泣く君の 頬に伝った 雫跡(しずくあと) 僕は黙って 肩寄せるだけ
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