蟻どもが蟬の死骸に群がるをしばし眺めつファーブルのごと     
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安心が欲しいよ欲しいよ触れ合った背中にぬくみが伝わるような
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空を刺すように乾杯 夏の牙みたいなラムネ瓶を掲げて
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外界をプールの底は遮断してここは真夏のひかりの棺
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贋作を見破るような眼差しに射抜かれている面接室で
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もう君の匂いも消えたこの部屋は墨絵のようで花を買い足す
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イヤホンをとつぜん外されるように夏を証明する蝉時雨
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電気消し眠りに落ちる寸前に耳にする音 ねこの毛づくろい
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ラベンダーティーは流行りかもしれないが ルイボスしょうがブレンドは何味?
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直線は 半直線だと きづいたが 時の不連続性 きざまれ破線
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明日のため資源のゴミを出し終えて一度きりの外出でした
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とりあえず横になりたい日もあって今日隣国はミサイルを射つ
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五個とかじゃ話にならない足りなすぎ 餃子は多いほど美味いもの
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だけれどもそんなこんなは残さずに綺麗さっぱり逝くとしようか
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こんなにもタップリ生きてきてるからそりゃあ恨みもつらみもあるさ
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夏休みぐらい故郷に帰ろかな ところできみはどの星だっけ
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公平に回る扇風機 私もと望むのは 目と目重なるとき
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夏の下もと響き合っては満ち溢る生の、もしくは死の匂いたち
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四時半は夜へひそかにかわりゆく八月半ば老けてゆく月
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なぜ俺が 不幸にならず 周りいく 悪いはすべて 俺だというのに
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通夜に出て 親父さんあなたに何を伝えよう 君の未来を 後ろで守る
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生まれたも I was born. もみな受け身 よかった俺のせいじゃないらしい
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にちようび 缶詰でねこはまんぷくで うまうましてる 一緒に寝ようね
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愛ってのは水道水をひねる時冷たくなるまで待つということ
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秋津洲あきづしま 早稻わせ穗波ほなみの立ちきて 蜻蛉とんばうとびかひ秋はにけり
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開きたればキムチの匂ひこもりゐる冷蔵庫なり首都 熱帯夜
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食べすぎる癖は盆休みの名残 普通に戻るまでが厳しい!
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傾いた を背負いたる 入道雲 輪郭ふち輝かせ 夏未だ終わらじと
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友達と 仲良く遊ぶ アゲハチョウ 淡い黄色が小川できらめく
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夕焼けがこわいと泣いたあの夏の乾いていない絵の具のにおい
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