深鍋で 煮込む根菜 味染みて 食べて備える 冬の寒さに
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食い物は砂の味する こうなって初めて気づく 情けないやら
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雲行きがあやしくなった 見てみれば 能面顔がそこにありけり
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鬱病は乗りうつってくもの故に あなたのフォローはずして御免
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祭壇に祀られし人起きぬかと怖い妄想に足が笑う
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かんかろき肉も血潮も塵となる花に埋もれし葬列の人
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吾のお粥発熱した子が褒めてくれ愛もウィルスも見えないけれど
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ヒトが見る海にも等しく母であり 調和として生むラムネの一つ
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まだ夏を終えたくなくて出らしのパックに注ぐ生ぬるい水
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初めてのデートで着てたスカートの色で揉めてる父母眺め/デート
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唯一の人類だった5分だけ 森に埋もれた無人駅にて
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運河見る欧米人を眺め見てロマンス詐欺はあるね、と思ふ
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はちゃめちゃにやっちまおうぜ今はもういないアイツの声が響いて
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夏過ぎて秋はまだ来ぬ神無月金木犀の香り届かず (こちらでは夏日が続きます)
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スカートが冷えて氷塊 歩を進め 膝も心も砕けぬように
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ひとときの儚き夢とおわりても 夢持つことはよきことであり
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チビ猫は ぽてぽてあるく まいぺーす だっしゅもできるよ たまにだけどね
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氷雨降り 心折れつつ 仕事する 滑る斜面に うるむ秋桜
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何を聴いても「あなた」やら「君」やらにあいつの顔が過ぎり終了
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草花はうねり轟きちぎれゆく ぼう被りし子ら跳ねて 秋
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献立に迷う長袖うちにまだ半袖もおり短パンもおり
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ビニ傘に ひびく雨音 イヤホンの 曲の変わり目 大喝采に
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しいが木にころり、ころり。とれる実をめるかけすの黒きこと
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水路沿い 曼殊沙華 群生す 夕焼けのなか 燃えるがごとく
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幼子に還りし父がつまをよぶ 六十年の我知らぬ時
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鉢合わせ 会ってしまえば 逃げられぬ さちを願えば 朝霧つつむ
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真夏より一気に秋の寒さ来て 老躯を守る羽毛を探す
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茶碗のふち しゃもじの裏まで一粒も見逃しはしない 米高い今
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秋雨が呼んだくしゃみと笑い声羽織る予定の上着をあげる
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こっち見る瞳の威力に動けない 淀んだ車内に澄んだ赤ちゃんのそれ
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