僕たちに仕事はいくらでもあるよ夕方に波を数えるだとか
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「月を観よ、そこにおまえの影がある」「秋だからってひとをころすな」
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「ゆうひすごーい! ママゆうひすごーい!」「本当ね」「すごいよママー!」「ええ凄いわね」
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雲のない戦禍の中を兵士行く断頭台に君の首
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くれなゐの 色うち消えて うつりゆく もみぢの心 君や知りけむ
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メルカリで三百円で売られてたきみの気持ちを買い戻せずに
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こものメルクマアルは溶暗し企みごとは月影のした
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汀にはさよならさえも絶え果ててデラシネたちは煤煙のさき
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目玉焼きナイフの先に黄身あふれフォーク右手に握り直した
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芸術の秋とはよくも言うもので さりとて歌は出てこないもの
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人が去り苔むし朽ちる僕の墓 やっと一人だ やっと一人だ
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街を飲む雨と雷鳴打ち眺む 六畳一間はノアの方舟
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ぽつぽおと鳩時計つげ背のびしし猫のよこにて文庫をとぢぬ
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鳩一羽ふりこといつしよに時ゆらす右へ左へ羽ばたかぬまま
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羽ばたかぬ鳩といつしよに人も在り時間ばかりを見送りてゐる
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モチモチかスベスベなのかフワフワか 赤子の肌をお菓子にしたい
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なつかしき木かげつくりしけやきの木重機の牙にひきさかれつつ
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歯が痛いらしい君とは話が噛み合わない歯医者行け
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きみどりからきいろと薄きだいだいへもみづる木立ち夕焼けてゆく
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めいぷるのほの甘きかをり漂はせ砂糖かへではお星を降らす
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蜘蛛の子の歩き遊べる書棚にて時間のなかの絵本ねむりぬ
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秋の夜はメランコリックになるけれど構わず食べるおはぎを二つ
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皮肉にも現実リアルの充実の度合いと投稿数が反比例する
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手を握るタイミングがつかめない君との距離は一万光年
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決断を迫られる窓には百合が一輪外を向いている
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パン咥え家出る娘、父案ず曲がり角での出会いなきよう
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「ちょっと君、お茶奢るから時間ある?」真夏の交差人波を裂く
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「神はどこ?」と少女の声燃える街煤色の空照らす三日月
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白い布被って夜に誓います あなたのふこう たまにしあわせ
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軽率な九月をうたう夜が来て静寂のなか鈴を埋めるよ
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