ことばなどおぼえなければよかつたな薔薇咲きほこる庭にたたずむ
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死出の旅いつか必ずゆく道を そんなに恐れてどう生きるのか
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「辛い」と言う手首に一を斬り込んで「幸い」だと言うことにしている
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「もう少しもう少しだけここに居て」最終電車は過ぎているのに
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フッ化水素酸で口を洗いたい君の辛さが辛すぎるから
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遠景の少年の曳くくるまより白線いづる夏のグラウンド
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感情の延焼はなお人を灼きはるか燎原WWW.ワールドスリー
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きみを抱くよるのしじまにカーテンのふはりとうごく風はらみつつ
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もういっそ灰色だけを載せて欲しい血の色だけはもう見たくない
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紺色の夕日終わりの空伸びる皐月に僕は上着抱きゆく
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人生に刺激が欲しいもんだから日々にルビふり偶然うんめいと読む
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ひとりでも生きてゆける我ら故 たまにつどいて風に揺られて
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わがこころ千千にみだれてくすのきのなみきをゆけばあはき樟の香
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帰り路に 地虫の鳴きぬ か細けき声 沁み入りし 春夏の速水に
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ぱちぱちとまだらな拍手がするような不安に僕は怯えているんだ
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コンパスで描くみたいなお決まりのデートプランはもうやめようよ
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くす玉を開くみたいに羽根ひろげ またたいていくなないろてんとう
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うしろ足を8はちの字にしたかいねこは ゆっくりとお尻をかかげて座る
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自転車のかごだけ避けて散る桜の 背せなで聞こえる人の歓声
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公園の日射しのなかで 99.99フォーナイン 血液巡り満ちゆく黄色
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かずしれぬつぼみほころぶあぢさゐのつゆわすれずよひとのおもかげ
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この土地の舞踊を踊る我が娘付けたおさげも舞ってカラフル
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お前にもおれにも星はただ遠く 何もする気の起きない夜だ
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夏になり脱ぎ捨てるものあるかしら老いた身体は裸になれない
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本当におれを大事と思うなら 何も告げずにただ去ってくれ
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夜に身を沈めてもなお透明の夜を飾れる田中の鉄塔
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ささやかな幸せちょっとした不安それこそがこの世界の全て
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厚ぼったい闇を染ませた雲裂けて銀で仕上げた月までの距離
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鈴ならば玲瓏と鳴りいださまし風にゆらるるヂギタリスのはな
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ひきこもり慣れた道のみ往く日頃たまの遠出の緑に夏知る
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