鞘森天十里
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さやもり・あとり | 猫と馬が好きです。

真夏日に御堂の内はひんやりと虚空を睨む阿修羅はしづか
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ぐるぐると喉を鳴らして目を瞑るブラッシングに老いたる猫は
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嫁ぎ来し祖母の黒引き見事にて仕立て直して纏ふ晴れの日
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波やはき浅瀬に立てば我が足と七つの海は繋がりてあり
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朝採れのレタスを千切る丁寧な暮らしは遠くただそれを食む
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思ひ出は組紐のごと美しく互ひに絡み結はれほどかれ
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吹き渡る風の薫りて川端は白き野茨うまらの青空に
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しづやかに馬は立つなり装蹄の釘打つ音に瞼閉ぢつゝ
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朽ちし棚新しくして藤の木は蔓また伸ばしやや花つけぬ
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キッチンは高き日入らず苦瓜の青白きわたひとり刮げる
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青々と息吹眩しき窓の外病棟より見ゆ生命いのちの謳歌
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貴方への最後の手紙として記す白き短冊に薄墨滲む
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青空に飛び込んでゆくうおとなる湿度を帯びてなつの前の日
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零れ落つ木香薔薇の淡い黄と空の青さに想ふ国あり
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黄砂来て空は殆ど見えぬのに今日はやたらと雲雀が鳴くし
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地下の書庫は古書の匂ひが充ちてをり深呼吸して階段上がる
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生まれしに父母より受けし姓名を手放すことなく死なせてください
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きゅうを極む蒲公英のわたげは支度終え佇みて待つ旅立ちの風
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あの丘の東に四つ葉のクローバーいっぱいあるのは秘密にしとく
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指に染むインクの痕は薄れても日記に秘めた想いは褪せず
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誰にでも故郷ふるさとならばあるはずで私はそれが東京なだけで
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わたくしが知りわたくしを知る街が徐々に消えゆく高架化のため
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強き風に吹かれてもなほ上を向き白とくれなゐならぶ花水木
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瞬きの多さ前髪触るる指君の仕草を愛すといふこと
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わたくしの愛するものが愛されるそういう世界でわたしは生きたい
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この春にれしとねっこ跳ねるごと草地を駆けて世界目指さん
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「さみしい」と心の隙を見せたなら蒔く種をくれる人はいますか
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真円を目指して丸くなる猫の渦巻いてゐる喉から春雷
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猫たちが鍵盤を踏む昼下がり仮面の向こうに平和は或るや
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戦場に平和来たれば兵器にも雪の積もりてメリー・クリスマス
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