不時着の飛行士の願い空の果て蛹さなぎのこころ忘れぬように
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病める夜に冷えピタ二枚熟れ過ぎた香りのせる無花果のごと
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五感ではここに来るまでが遅すぎてもっと直接届いてほしい
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裂開がはじまるまぎわ遠ざかる愛しいぼくの感覚器たち
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思ひ寝のゆめにもなみのおときこゆさがみのうみを恋ふるよなよな
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ささやきは書斎の隅へ吸い込まれふたりっきりで少女卒業
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きぬずれのあまいわたがし夜に消えて一瞬たりとも見逃したりせず
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しがみつく愛は水滴夏のすそ蒸発するまであと何秒
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本の間に乾いておりぬ皐月の葉放ったらかしの日々をかぞえている
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ハムチーズトーストかじる午前九時 母へ一人でやっていけています
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メゾピアノ桃色ドレスどこいったせび乞うわたし時空の彼方へ
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ぶどう色秋の夜長によりそえば東京ワンルームファンタジー
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往年の洋楽ばかり聴いているあなたのせりふは聞いたふりして
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紫陽花にかくれて陰気な怠惰さがたゆたう六月窓に露がつく
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人々のあつい気配でかみしめるシュガーナッツが私の救いよ
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目を見ずに「お化粧室は」と尋ねるときのなんと自分の無機質さよ
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夏空よ私にこたえてラベンダー ゆらりゆられし吾のやわらかな髪
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コカ・コーラ ちゃりんと入れるその指をみつめておりぬ自動販売機
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ソーダ水飲み終えたならつれてってはじける恋のみどりみたいに
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潮騒のカーテン微々もゆらせずにしめだされいて都会の亜熱帯
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幸福なる陽もさしこんでフレンチトーストあなたの「おはよう」
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ねぇとよびとめては話すことないけれど振り返らせたいよる夜の道
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仰向けのせみが握った中指は終わるいのちにわずか震えて
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ちょぴちょぴと水が漏れてるかのように僕の時間は無駄に過ぎゆく
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じんわりと汗がにじんでいくような不安のなかで僕は生きている
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手をつなぎなみうちぎはにおりるよるうちあげられたいるかさがしに
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みなすべて  吹き散らされて   秋の風 なきごえなきがら この夏の蝉
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学校へ急ぐ制服見送った。18切符はまだ二枚ある。
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感情に轢かれた猿の臓物が五線譜上にまろびでており
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「おーいカラス」カラス黒いや舞台よね 今日も一役演じていたね
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