深海に 散骨前に 行き着いて 底に寝そべり そっと目をつぶる
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私よりできないひとが私よりできることとか得てるものとか
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ねこじゃらし 風にそよそよ 揺れている おみやげさんは いっぽんだけね
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夢に見るほど焦がれるは君なのに複数形で濁したズルさ
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ヌメ革のトートバッグを持った君そろそろ街も薄暮の時刻
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人混みが嫌いな祖父と一度だけいっしょに行った東京ドーム
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もう二度と 書けぬ名前が せつなくて 唇を噛む 国勢調査
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些事満ちて我が身儚く蟻のごと空にそびえる怪異の下で
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可愛さと大変さとのはざまにて今日も暮れゆく母の一日
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しっかりと右色で輝く高市人事 連立でいかほど薄まるこの右色
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顔知らぬあなたの言葉に惹かれてる平安時代なら付き合ってたかも
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地の底で溶けて抱き合っていたぼくら なり損ないの星座だったね
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京王線詰められた市民振り子になってカーブの度に時を数える
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たちあがる つまづく しゃがむ ジャンプする 無重力ではできないことだ
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風は凪ぎ踊りをやめた葦たちは まだ月の噂をささやいて
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散り散りになる子供らを追いかける保母さん達の歓呼の声か
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緑色つい前までの山の木々五色の色に染まりし秋は
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香り立つエスプレッソの小カップ両手で包み白い息吐く
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おじさんはコーヒー飲まないほうがいいってそれ以上臭くなってどうする
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ねこ母は 今日は 赤毛のアン・コスよ 気持ちはわかるが 太鼓の達人たいこは やめとけ
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放たれし格子向こうはキャンバスに浮世絵の如広重の雨
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どんぐりの 屋根に落つ音 心地よく 秋を愛でたき ハイイロチョッキリ
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マップラバーだけでは描けぬ この世界 私はライフを 手放すものか
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生き死にの両価性を受け入れてめくり続ける花弁と明日
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手渡せば米のぬくもり心に灯り 叱られた日の影やわらぐ
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くもり予報を余所よそに秋晴れさやか 昼休憩に吸いぬ秋風
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風揺かざゆらの 季節忘れし 青い花  今頃やっと 秋の朝顔
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お団子の髪をほどいて暖をとる 雀の涙もゼロよりはまし
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窓側の席がほんとに寒すぎて セーター忘れたあたしが憎い
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えっ何で鉄の女と鉄の処女混同してた私は馬鹿ね
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