古い血を抜いた肢体を横たえて仮死状態で明日の陽を待つ
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主語および目的語さえ用いずに自他の別をも融かす民族
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自己と他者過去と未来の区別すらない新しい世界の知覚
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八月のマイナス二度の部屋の中寄り添う理由わけを探しているの
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恋人の服を優しく脱がすように あなたは魚を骨だけにする
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火葬場で 焼き上がりまで寿司食えば 膨れた腹が命教える
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"I love you"「月が綺麗」と訳すなら雪の日はきっと"Stay with me"
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「適応を覚えなさい」と叱咤する日本生まれのSuicaペンギン
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秋と書きときと読む意を思ひつつ人の秋いま彩りそむる
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瑠璃壜の光を汲める薔薇あまたくれなゐ圧して慎む能はず
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花野にて夢みることを連れてゆく枯野へ向かふ白きなるみち
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旅先で食べるつもりでいた林檎りんご 食べぬまま也家路共なりいえじともにす
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ことのはが五や七求め漂えばただちに逮捕短歌禁止法
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故郷のおいしいご飯と広い風呂 素直になぁれっ素直になぁれっ
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血の地図を辿るとちゅうで湧き水のこんこんと湧くほとりに憩う
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「ぼくたちは遠い親戚なんだね」と夢で出会った少年は言う
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にいちゃんのエロ本の山に紛れてる中原中也の詩集のきもち
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もう君はノートの端に落書きをしては私に見せてくれない
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また明日ねって明日隕石が衝突したら会えないじゃんか
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もしかして前世は花屋の店先で隣同士で咲いていたかも
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均等な間隔をおいて植えられた黄色や赤に将来はある
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あか、みどり、とりどりの服とり替えてとり憑くものもわたしの虜
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讃州の乾いた夏に讃の子と打たれて遊ぶこうの滝かな
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自我をトンテンカンテンして上から瓦屋根を乗せる
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渦巻ける鳴門の潮を進みゆくさき漁船の命頼もし
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その色をきれいと思うそのままにおんなじ色にわたしよ染まれ
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生涯に一度の魔法いまここでどうか私に見惚れてほしい
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感受性豊かな子らを乗せた舟乗れない子らのまなざしを背に
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瑠璃壜のみづ閉じ込むる向かふへと光のなかの抽象画かな
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波と雲とみまがひ白の御伽へと入れる空跳ぶ兎の話
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