春の陽のにおいがすると言う君の唇が春を思い出させる
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右ポケットに君の手のひら侵入中 あの時ぼくら東京になった
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春の日の縄引く山のむらさきのひらく小袖に燈が点りくる
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もし君とおんなじ舌をもってたら 頼んだメニューそれを二つで
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四つ辻に打ち捨てられし一握の豆に染み入る夜の冷たさも
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濁点が尖っているのに透き通る空気に春を感じるサイダー
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コンタクトレンズの度数上げたって見えるもんかよ 君の過去とか
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たまになら飲まれていいかな荒川のような人の群れと我が恋
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大切にしたいからこそ 丁寧にそっと隠すの 物も気持ちも
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まだ君は諦めきれず立春の手前で舞っている冬の風
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エクレアを頬張る夕方 絆創膏を貼った膝をそっとさすりつつ
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濃厚な四角の中の生活は足の筋肉痛さえ愛しい
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すれ違う目を伏せがちなあの子にも宇宙はあって平等なのか?
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はじめてのお揃いで買った筆箱の捨て方に困るふりをして寝る
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「福は内」家族で豆を投げること これにまさる福があろうか
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何もしない自分自身を責めている 自縄自縛のワーカホリック
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さよならをしたことだけは憶えてる なにとしたかは忘れたけれど
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永遠に変わらない愛(空集合)完全な正義(空集合)
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臆病と言われたくはないので水たまりを飛んでみたりする
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私に似た人なんていくらでも だから探すの大変だったよ
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「一人での夜などお手の物です」と言えなくなったことを祝おう
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海だってぼくらの母になりたくてなったわけではないはずなのに
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鳶高く津和の綿毛をそよがして、参る春日や 荒神の山
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鴨ひそむ夜の河添こうぞえや 月なきにそられるまで霜の溢るる
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小綺麗な鉢に咲かされ福寿だのと呼ばれ、しかし毒草である
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なるほどな そりゃ見つけられないわけだ  昨日のきみは新月だったか
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鬼だって真冬の外は寒かろう 福といっしょにうちへお入り
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月ですら飽きてしまうほど長い夜 羊たちは目下ストライキ中
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少し赤い 日差しが照らす まぶしげなる顔 まだあどけないなと
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節分をキャッキャッと姦しく祝っているアイツラがどうも妬ましい
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