のんびりと 露天に浸かり 雲見れば 浮世の垢も洗い流せリ 
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今宵見ふ月と花とをおなじくは遠ひ地に居ふ君へ送りたし
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層雲が隠す灰色の教室 黒鉛延びて空と繋がる
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今ひとつ わからないけど なんとなく みたいな感じが 楽しかったり
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愛おしく髪を梳く手に身を任せ目を閉じて聞く柔らかな声
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クーピーを買い与えられたときめきを百均で買う水彩鉛筆
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ひらめきは大した事はないもので先にスマホに訊けばよかった
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お茶したい刺し子もしたい親友とも宛の手紙も書きたし明日の休日
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両脇に建ち並ぶ家 私沿い 空見えぬ今 暗渠と呼ばれる
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メンクリの待合室のオルゴール 曲は『命に嫌われている』
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春の夜の月をペンではえがけない 白く滲んだ雫みたいで
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「今日ライブだから帰り遅くなる」「あぁ克樹か」と理解ある父
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また一匹照明の中に虫入る 暴れる足が止むのはいつか
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楽しげにLINEで話す娘らの 朗らかな声が聞こえるようで
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公園の木に鴉の巣撤去され七つの子たちいたら気がかり
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病院の機械はいつの間にか牙を剥く 噛まれた身体に血のあながあく
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嘘ひとつ見抜けないまま笑ってるまっすぐな瞳が痛い午後です
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まっすぐに倒れるドミノ見ていると生きるってきっと短い連鎖
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血まみれのままでくちづけ続けよう落とした黒があかくなるまで
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今飲んだ薬ピンクのイブ韓国持ってくと処罰されると聞いてびっくり/行く暇も金もないが
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「げんき?」って送ったメールの返信はピースサインと桜の画像
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ひかりさえ届かぬ場所へ落ちてゆく満たされぬまま死はゆるやかに
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朝ぼらけ社をまもる狛犬が左右から問うお前は誰か
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スーパーの店先小さな燕の巣『見守ってね』の張り紙嬉しく
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昨日まで空白く染む花びらが散る地瀝青、つま先で踏む
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花びらの舞う 通勤路 歩を運びながら 感謝す 長き開花に
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窓際にひだまりがあり教室のひだまりたちが占拠している
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これからの話をしよう肉体が朽ちたそのまた先の話を
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聞こえないふりをしてます聞かされてない先週の飲み会のはなし
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春雷が最終ホールにとどろいてカップインした音を打ち消し
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