万葉に古今新古今と教われど いずれ響かぬ敗けた国の子
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喉痛む 体がだるい 熱っぽい これは風邪だと 久し振りやんか
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札幌の三歳の曾孫に電話する水族館の事を色々喋る
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薄雲を淡き光で彩れる秋の朧な月も佳きかな
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「まだ若い」の「まだ」がひっかかる 「まだ」が「もう」になる日が来るのが本当に怖い
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「生きていますか?」 リマインドにまた「了」を押す。 明日の私に宿題を出す。
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「幸運になるために」と付く本を買う とうとう自分もここにきました
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月読の流るる雲に隠されて 姿見えずも闇を照らしぬ
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指を揉み 乾きに時間を感じては 五本あったなと理解していく
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たらちねのやわくぬくぬく母の手は なつ東雲しののめ凍露とうろのひかり
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月明かり 釣瓶落としの六時半 野良猫は背を丸めて睨む
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開け放つ家の窓すべて風を待ち来たと思えば通り過ぎていく
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ペボ拾い剥がして潰して詰め込んで袋いっぱい大収穫
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途切れそうな鼓動に耳をすませる涙よりはやく夜が零れる
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どこででも買える冷凍食品を送料かけて吾子へと送る
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今日もまた一度も開かなかった本 初めて電車に乗れてよかったね
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憎しみが命の尊さしのぐこと乗り越える日を夕陽に祈る
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我が国の舵取り担う宰相に女性で初の高市早苗氏
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秋桜は思い出あまりに多すぎて あれもこれもは歌にできない
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スマブラで子から雑言浴びた日の四十六歳秋に生まれて
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あの雲の上には確かに満月が若くて逝った君の居る場所
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プリンとは好みの違いの関ヶ原 濃厚トロトロさっぱり固め
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酒を飲みだらしなく笑う友だちも家に帰れば父として居る
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秋風あきかぜが うたうたえと さその  そらかりし 小望月こもちづきかな
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濡れそぼる交通安全の旗は未来を照らす寂しい光
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何処にでもあるような英単語集私があなたを買ってあげよう
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人工の星を見上げる人間が自然な涙を流してもいい
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坂下る自転車の持つスピードがかつての私を置き去りにして
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日がな寝て見上げる満月覆う雲 輝きせても時は流れて
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苦しみも私を作る一部分だからあなたに優しくできる
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