あたしの手よくみてちょうど嵌められるようになってるその手のマグを
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クリスマス 誰かの笑顔のためだけに 火にくべられる チキンになりたい
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くろぐろと長き尾 老猫あの夏に喰ったあげはの飛び立つまでは
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散り落ちた金木犀に沈みゆく街に波より軽やかに花
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衰えを知らぬ紫紺の朝顔は我が十月の静脈に咲く
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鰯雲 鱗に混じった一枚のねぼけた白い月を指さす
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鈍痛の汚泥は枕のかたちして窒息するほど嵐のにおい
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香に酔う雨がしとりと手を伸ばし金木犀を孕み落日
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幸福の色は白色 くつくつと笑いころげる新米の湯気
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悪いことしてるみたいに盗み見る横顔いつか宝石になる
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僕らには酸素が足りない 水槽のシーツに沈み何度も喘ぐ
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放課後にくるくる踊る影長く かえるおうちのない子供らの
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彼岸花 すがる葉もなく一筋に仰いだ天に火花の如く
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あけすけに老いさらばえた白百合に清きくちづけおとす朝露
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オレンジのお日さまみたいなコスモスがやがて抱かれる未知の冬の死
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秋色の葡萄たわわに連なってわたし一粒消えても誰も
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はじめての答え合わせを 繰り返し夢のあなたを記憶した手の
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心臓の真ん中刺して永遠に傷跡残すメールが、今
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あの夏の忘れ物箱に入れたのは麦わらだけではなかったはずだ
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きみのまだうまれるまえも夕暮れはあかあかきみに恋してたんだ
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硫酸の雨の果てにはサファイアの夕焼けが待つ火星の大地
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くらやみのラジオで誰かの思い出の古い知らない音楽を聞く
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ああ君が隣にいない傷なんて忘れるほどに美しい月!
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触れ合った音だけ拾えば抱いている君の寝息が世界のすべて
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今日僕は ケイタイ番号を かえます 人間関係の 断捨離完了
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「役に立たない消しゴム」がデジタルの紙面の上で役に立ってる
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手を伸ばす 届くはずない月さえも掴めぬこの腕ましてや君など
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善良で生きてるだけで、この世界の 誰かの救いになることもある
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気力では どうにもならない 世を生きる 君に敬意を (あるいは、さよなら)
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(本当は 選ばれたくなどないんでしょ?) カップの底から 声が聞こえた
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