親指を立てて熱波に沈んでく 秋にI`ll be back(なんてな)
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横たわる俺と見下ろす俺がいる 蚯蚓のたうち干からびる午後
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もくもくの入道雲の正体は巨大にされたプードル怪人
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枝先で地面に書かれた数式をここが違うと鴉がつつく
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横顔にいくつ見出す黄金比 触れて壊せば蝸牛かぎゅうはあぶく
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炎天下 高校球児とひまわりが等しく挫折にうなだれている
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探偵が暴く密室殺人のトリックのように欠けのある「好き」
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断崖で犯した復讐殺人の顛末告白するような「好き」
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玄関に全裸の君が立つようなピタゴラスイッチ的な奇跡を
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青信号を渡らぬふたり指からめ これからもっとわるい子になる
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膝を抱く堂々巡りの草むらでアウフヘーベン説くか捩花ねじばな
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象の死に涙をこぼす食卓の上で無数の命ささめく
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目隠しの奥で目を閉じみずからの闇を選んだ 夜を求めた
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晴天に秋のかけらが散るの見て 自由のもとで食う弁当
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「西君がいじめにあって泣いてます」そんな眉しないでよ先生
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永遠の子供の夏を希釈して氷を浮かべたカルピスの味
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日輪に対峙しおまえは何を見た ひまわりひとり地に影刻む
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いま誰の悪夢を食べてあげてるの? きみの姿の獏のない夜
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冬の日の床の冷たさ死にも似て 静かに確かに奪われる熱
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この夏は空を旅する船にのり世界をささえる象を見にいく
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泡立った逢魔が時の夕闇に琉球朝顔溶けて紫
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ほどかれてみだらに乱れていた帯を生まれなおして貞節の蝶
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宵宮に衣紋を抜いた背の奥の翅のきずあと触れてみますか
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逃げ水を追った記憶が噴き出した ラムネのビー玉いつかの碧
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七月のスタートダッシュで加熱する夏に麦茶のポットぶつぶつ
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図書館にハミングしている本があり開く前から運命だった
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どれを食べどの服を着てどこへ行く足を止めるな新宿迷宮
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人の靴ばかり見ている雑踏のなかに潮風 迷子のかもめ
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雲ひとつない空なので飛んでみた シャボン玉色の恋をしていた
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誠実の定義の差異もこうすれば見なくて良いと明かりを消した
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