草いきれ 雨降る春野 束の間の水浴み  光宿せる夏へ 
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引きて堰く苗代水のいかなれば過ぎゆく春をとどめかぬらむ
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ちんまりと 箱におさまり 寿命待つ 宇宙を背負しょって 生まれたはずも
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肉じゃがの旨み確かむ夕餉時冬眠開けの根菜届き
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酸欠の金魚の如き父の口にそっと当てがう“楽飲み”の先
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狛犬の 間をするりと くぐり抜け 日常からの 少しの旅へ
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どうしても 見せたいなあと 思う人 居てくれるから 頑張れるのだ
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日も伸びて ついに今年も 夏が来る 背中に羽が 生えた気がする
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太陽がヨハン・シュトラウスを響かせて水平線から私を照らす       
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憂鬱と黄砂に霞んだこの街を清めるが如雨は降りたり
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ワイドショー見るとその内アカになる昔は馬鹿になると言っが
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昼間より飲む 李白牧水ハイヤーム 旅人なども我れの酒友
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沈痛な選挙事務所のとなりには「大願成就」の酒を売る店
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死に触れて帰り道には腹が鳴る生きるというは腹が減ること
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レンジをピッ卵を焼いて子を起こし 手を貸し給え千手観音
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持てるもの全てを君にあげたくて宇宙すべての夕日を君に
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「ラーメンが僕を求めているんです」深夜一時の口癖が行く
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死にかけの人の匂いは赤子のように柔らかいソープの香り
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「サヨナラ」をきちんと伝えたいからさ も一度あなたと出逢いなおしたい
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学校のトイレで精神科に電話をかける これが青春か
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鮮血が みちにちらばる 椿の赤。ミャンマーそしてウクライナ
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分け入れば 馬酔木あせび 山吹 山菫 媚びぬ命の春を寿ことほ
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短歌詠む幸せ見つけたその日から 私の心に明かりがとも
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他愛たわいない会話ばかりの電話でも 私の心 心配だったと
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悪者も真っ赤な顔して泣きながら生まれた時が確かにあった
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「母さんの苦労がよく分かったよ」 独立した息子 最初の言葉
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黄砂来て空は殆ど見えぬのに今日はやたらと雲雀が鳴くし
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涙越しいとし息子が巣立ってく 吾はいまだに子離れできず
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人間は後ろ向きには歩きにくいがばいばあちゃん、おら歩けねで。
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恋人はたぶん不可分わかれても きっとどこかでつながっている
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