毛を着なよと兄が言いつ手渡した薄手のシャツの肌寒い朝
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大きくて可愛い犬のおでこ撫で大きいだけの吾のおでこ触れ
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中東のトカゲを飼いしこのまなこの見すえる先にたばこ吸う父
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亡き人の面影とともに濡れ光る落ち葉ふみゆく諸聖徒日の朝
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霧のなかチヤペルの地下の白きなる精霊の棲む納骨堂へ
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聖堂に天使とびかふ季を迎へ蔦の葉朱く鐘にとよめり
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降りしきる雨に打たれて 淀む目に浮かび上がるは 遠いあのゆめ
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つまむ指 そっと離せば 白ぶどう アルコールの底に沈みゆく
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乱れ咲き 匂いかみつつ指先にそっと触れるは 太陽の花
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そこにある美のイメージを掴もうと全て投げうち未知の道へと
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腹を見よ われ肥え太る食事とは ベルトをゆるめることから始まる
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一瞬で、なが~い列車通過する ガタゴトガタン ガタゴトガタン
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言うなれば獲物を狙う獣かな歌成す言葉とらえんとする吾
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人々をつないでいる糸それが愛 それなら君と私の糸も
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度重ね募る想いを閉じ込めた箱を見つめて過ぎる年月
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なまりなき鶯谷の夜歩きは生者と死者のねやが隣す
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なま成りの詠み手となりてはや四月よつき歌の悪魔に絆されている
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新嘗もSamhainサウィンも我ら手の内とカボチャ頭の魔とほくそ笑む
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そこにある理不尽をグッと掴むには「違和感」という感性次第
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恋なのか愛なのかすら分からずに君を想って早くも三年
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『思弁的実在論と現代について』を読む、真っ黒な窓
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記憶とふ時間をこぼしてゆく人に肩もみをして記憶を贈る
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思い出をぽろぽろどこかに無くしても帽子の翳の目のほほ笑みぬ
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雨の音に包まれてゆく季であれば透きとほる歌うたはせたまへ
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影だけはきっと優しい照明を消すから私をすっぽり抱いて
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感傷を傷と言うならこの傷はそうとは言えぬ単なる穴で
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前を往く車が吐いたガソリンのにおいを気にして息を詰めては
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いたつきの床よりながむ往来はほがらほがらでさびし疎まし
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メモ帳を切り取り貼り付けする度に心が減っていくような心地
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夢現彷徨いながら息をしてずっと寝てたいあなたが死ぬまで
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