朝告げる機械仕掛けの鳥の声 おはよう世界さよなら夢幻
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神無月 さ迷い出でても神は無く 呼べど応えず 探せど見えず
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下腹部の深紅の月が燃えているおんなに宿る暗い憂鬱
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旅人は 慣れし故郷を放たれて 夢に楽土も見えず 眠りぬ
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臨月の身重がひとり中座して 観光列車のごとくゆりかご
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少年のお葬式には青い花添えてください枯れたままでも
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テキトーに入った千円カット店 えっ? この爺ちゃんが切るんスか…?
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心澄む 燃える如きの 空と森 いっそこのまま 燃えて失くなれ
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見上げれば 星の霰に 飲み込まれ 気づけば僕も 流星になる
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木も鳥も答えぬ 森の夜長には 火の語り部が 饒舌になる
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返信が来るよりも先に死んだっていいもん充電7%
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約束をしてみたわけじゃないけれどあなたと同じ月を見ている
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朔太郎、安吾、啄木 好きなひと 下の名前で呼び慣れなくて
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ほの甘き洋梨を食み恬淡と生くることなど思ひ描きつ
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洋梨のかたちの言はむとする矜恃めぐりて腰を据ゑてみむとす
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十五夜のつぎに麗しき十三夜なにか良きことうつしそむらむ
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お弁当毎日作ってくれる母感謝しながら会いにゆきます
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不規則ないびきと肌のぬくもりの尊さだけが遠距離の恋い
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遠き日の小っ恥ずかしい思い出を小っ恥ずかしいまま記憶している
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「アレクサ、俺が死んだら古いジャズ流して」ト、椅子につけた小指
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一生にただ一度だけでいいから嬉し涙を流してみたい
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おい今夜飲み行こうぜと言いたいがアンタの連絡先を知らない
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バカなんだ子どもなんてといいながらお子様ランチの旗を集める
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幼子の先史時代pre-historyの足形はいまも地上の裏側を蹴って
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小魚は凛として泳げ惑乱が臍の裏側を渦巻く底に
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薄霧のカーテン途切れる 向こうには 生まれるはずではなかった姉が
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弱い人は 踏み潰されると知りながら それでも私は君の歌が好き
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前だけを向いて生きたいはずなのに 背後のぼくに狙われている
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聖なるかな 帝王切開のいもうとに生えた輝く永久歯たち
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目が醒める 頭が冴える 晴れ渡る雲ひとつない空の日の朝
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