ばあちゃんが作ってくれる味噌汁は葱とわかめとまあるい豆腐
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ああやっと夏が終わるのではなくて いのちが終わる 君のせいだよ
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名残なごりとは胸しぼられる重さなく道端の一葉ひとはさやれる音か
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非日常 財布も緩むその隙に喜びもあり哀しみもある
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黄昏の秋の河原は芋炊きの香を運び薄が揺れる
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一日をとじる芙蓉の白のなか秘密をしまふ秘かにしまふ
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ベランダに転がる蝉は生活の一部になりたかったのかしら
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八月もようやく終わりと言いつつも「暑いですね」はあいも変わらず
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弓手とも馬手ともつかぬ鈍腕なまうで不動明王アチャラナータに帰依をためらう
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夏夏夏、秋、夏、秋の色調差、哭ぶコオロギ、熱帯夜、風
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予め「そんなつもりはなかった」と言うつもりなら有っただろうか
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もの憂さと潮解性のまどろみと久遠の青にはこばれてゆく
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草の波およぐ黄金の風となりささめきわたる色取月へ
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あたたかき色のささめき西に立ち森も草木も約束のなか
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土色の器にあそぶ秋草の遠き日をよぶ風のたゆたひ
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いじましき会話の無為が尽くされる4000円の呑み会に出る
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コーヒーを絶って何とか一週間 誘惑に負け今飲んでいる
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少年のような少女に恋をして未知の遊びをおぼえたあの日
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オリーブのあぶらのやうなかなしみに茄子をひたせばにほひ立つ紺
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「蝉がいない」ことがすべてを物語る 夏の終わりの否定神学
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かかとを隠しあっていて遠くなる立ち尽くすのに力が要るとは
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「ジュリアン」と亀に名付ける人がいる 盆が終われば蝉も鳴かない
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迷宮に入り込みたる今宵ゆくこころの奥の秘密のこころ
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ふと耳に聴こえてくるは虫の音か はたまた蛇口をひねった音か
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花々に埋め尽くされた廃病院かつてわたしはここで生まれた
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慰めも指輪もキスもいらないわ わたしはひとりでしあわせになる
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粘膜に粘膜を溶き縺れあうここは浄土か不忍池
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龍を名に冠する風呂屋屈強な背にすむ龍も紅くおののき
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ハザードが点滅してる犬だけが乗ってるワゴン車パーキングにて
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アッツアツ サクッザクッとアジフライ グワッとご飯 ほか弁ヤバイ
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