名も知らぬ蝶の歩みはてつてつと 幼児が踊るバレエのようで
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午前二時温室の戸が閉まる音百合と眠ろう永遠にあなたと
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何度でも思い返してむせ返る無駄でしかない意味のないもの
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これからも世界を嫌っていてほしい僕を一人にしないでほしい
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牛乳と卵を溶いた感傷に浸して焼いたフレンチトースト
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私には今ともだちはおりません みんな急いで死んでしまった
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自画自賛 おれが作ったジンジャーエールが世界で一番おいしいはずさ
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ファゴットとピアノのためのコンチェルティーノ 作曲マルセル・ビッチュ
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雨、プール、湿度と雫、雲と海 悲しいほどに美しいもの
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木漏れ日にため息そっと忍ばせる木立を渡る風になりたい
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梅雨中日「しとやかに降るの」恵む雨我も喜び草木も嬉し
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何気ないあなたのたった一言が いまだにおれを支えています
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おれはまだそこには行けないようですね うまい酒など今度送ります
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おれが死ぬときの天気は雷雨がいいな 今度は修羅に生まれたいなあ
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まっすぐな線を描いたはずでした定規をもつ手が震え止まらない
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誕生日やったことは母と飯食いに行った何かは当てて
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少しだけ早く起きて遠出する旅のお供のさくさくぱんだ
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雨上がりいきなり奏でる虫の声しじまの中にシンフォニー聞く
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口座から幸福が引き落とされる情状酌量なんてなかった
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白きのどみせつつ麦茶のみほしていのちみなぎるみなづきをとめ
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蜘蛛の巣に朝露ひかり万華鏡罠というものあちこちにあり
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真夜中に目覚めて飲んだあの水が砂のようで息苦しいな
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あじさいに逃げ込む私は群青です 来たる夏から逃げたいのです
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「セルフ午後半休!」 叫び窓ガラス破って空へ飛び立ってやる
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みじか夜のゆめのほとりのほととぎすひとこゑ鳴きしのちのしづけさ
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生きながらにしてあの世の草を食むときもお前自身の死を認めるな
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青春は着色料で染められた添加物だけの飴に過ぎない
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紫陽花の残骸に咲く向日葵が真夏を告げる湿度を添えて
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指先で春を崩せば毒になる 蕾を摘めば雷が鳴る
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大魔神の名医の良き計らいで我は助かる夢を見るなり
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