まなじりの浅瀬を泳ぐ鮫の尾が暗礁の雨樋を叩く
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春風に 踊る草花 鳥たちも 歌い出す時 春今そこに
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無自覚に収奪されたものたちをこの手にもどす為の強盗
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凍てついた組織にそっと潜らせてわずかな刻を確かめる刃
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片づけた毛糸の帽子また被り五分にも満たぬ桜見上げる
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在りし日に 通った坂道 学び舎の 桜の薫りは 今も変わらず
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満開に見惚みとれ思わず立ち止まるビルの谷間の一本桜
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学び舎を 望む丘陵 老体に 今年も薄紅の 光は注ぐ
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一人なら 葛藤しない 献立を 考える家事 億劫になり
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朝ごはん 食べつつ昼を 思案して 昼を食べては 夜を思案す
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5年ぶり先発勝利土壇場に冷静君が一番星だ
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三振で迎えた歓喜瞬間は今季の初の乾杯になる
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勝負強さを発揮5打差を逆転の笑みは通算10勝だから
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幸せを 噛み締めながら思うのは 今死んじゃえばもう泣かなくても
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今季初勝利破顔にしてくれた勝ち越し弾の田中健在
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2回KO防衛左ボディーへと光る一撃あっぱれ2度目
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理不尽なルール子どもが学ぶのはアフリカ系の人らの差別
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痛烈な一打逆転呼び込んだ二塁打ギアを上げる快投
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新人が未来を創るまた言った元気はつらつ勝って笑って
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10安打2点ちぐはぐ5連敗ビールが待っているのに寒い
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風を切り裂いた先制弾で勝つ四番代役窮地を救う
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農夫言ふ 一月ひとつきたてばこの村は桃源郷になる いっぺん見て欲しと
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れんぎょうの金屏風ひかる垣根みち 変身あざやかまぼろし小径
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ラジオの言ふ「清明の候です」の声がかつ、気を引き締めて職場へ向かふ
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心など殺せばいいと思ってた(存外こいつは活きが良かった)
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雲間から日が差してきて光る雪僕には少し眩しすぎるや
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春だから寝過ごしちゃうのは仕方ないだって昔の人も言ってる
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ウォーリーのいない絵本を生きているビルの建つ〳〵「街」に来てから
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お花見と 口実にする君を好き 言葉は実を結ばない
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「がんばれ」の言葉をぐっと飲み込んで 炎を宿す星に祈りを
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