みづ色を好みしゆゑにみづ色はいつも小さきかなしきクレヨン
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夏陽なつひさす溢れる汗と入れ替えに沁みる麦茶が同化していく
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広重の線の雨ふる五反田を肘笠にして走るワイシャツ
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電話越し あなたに「好き」と言えなくて 沈黙の果て ふわりと笑う
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風を切りあをの線画を貫けるつばめの空を抱きてみたし
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赤ばらの花びらの底に羽虫ゐて赤き壁より宙を見あぐる
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くたびれし頁の余白にひそみつつ意味をころがす歌のことのは
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きょうからはひとりぼっちの夜だから無音でおどるハンドスピナー
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口煩いネコをレンジに放り込み ドローンにして彼方に飛ばす
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マリファナの響きに色めく乳幼児 こむら返りは熱帯の夜
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ヨルガオのふとした涙に背を合わす 錆びたフェンスが忘れえぬよう
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項垂れる首刻々と色褪せて 去らぬ様にと陽射しは背を責め
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罅割れた土 戯れに水をやる 少女に還ることのない花
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髄液の底で揺蕩う霧状の記憶を求めて画面をなぞる
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たおれゆく琥珀が燿う箱庭で 足を持たないトルクが響く
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抜け落ちた前頭葉とZ軸へ肥えてゆく赤茶けた輪郭
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傷のない卵殻の中 よく喋る都市を少女は片手で統べる
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痩せこけたまなぶたの下 よこたわる粃 静かに背中をみつめる
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骨ばった指を蝕む蔓草の先で腐臭を撒く合弁花
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「寂しい」と最近君は繰り返す 横に居るのに「寂しい」と言う
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真砂土まさつちの押し出してなお山青し 踏み越えてゆけ 踏み越えてゆけ
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背にのせたおやゆび姫の吐息さえ奪えぬ旅よツバメ天飛ぶ
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あゝしまった君との喧嘩「ごめんね」のその四文字があまりに遠い
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にじいろの無限の綾をひも解きて 堂廻目眩ドグラ・マグラの夏に分け入る
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透明のグラスでカラカラ音を立て兄と一緒にカラダにピース
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瞼にはもう戻らない夏の庭 ホースの水にはじける光
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灯台より世界を見わたすつもりにて鴎とび立ちただ旋回す
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やはらかき花びらに眠る記憶にはおやゆび姫の吐息のほのか
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ポケツトに億光年を秘め持てる小石を鳴らしをのこ走れる
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二度寝して余裕を感じて三度寝を敢行したらもう九時前に
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