ストーブと綿入り袢纏動き出す嗚呼あったかい雪の降る街
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まちなかに越して数年田舎より人情などを日々感じ居り
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賑やかな 夏の海では 聞こえない 波の音、秋  届けてくれる
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「予期不安意味がないぞ」と紙に書く その文字の横 次男キミいたネコ
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マイナスやゼロを生むのも生産とカウントされる世ならいいのに
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あたたかい風呂の湯気にて ホッとする 森の息吹につつまれねむる
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儚げに舞うゆきむしの五つ六つ朱のダリヤを廻りて止まず
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過去作の 設定メモが 見当たらぬ どう書いたんだ 当時の私
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千年を過ぎて火もない踏鞴たたら場は神などいない森に呑まれて
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人類は どうやったって 愚か者 すでに暑さが 恋しいなんて
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隣から 咲いたよの声 窓全開 金木犀で部屋満たされし
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秋風に 揺れる稲穂の波の間に 雀のお宿か 賑やかなこえ
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夜の底光の溜まるバス停が遠くにありて遠雷聞こゆ
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下の子にばれないようにかくれんぼ 息を潜めるあと二日ほど
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もし俺が死んだらこんな日常を過ごすのかな、と死神気分
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気がつけば開高健の『パニック』とカミュの『ペスト』並ぶ本棚
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軟禁は時の流れがゆるやかで枕の向きをあちこち変える
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そこまでは太い柱じゃなかったなぁ会社も家もそれなり回る
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当てのない検索画面累々と思考が並ぶ 駄目な奴だな
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階下から響く子どもの声聴けど近くて遠い隔離生活
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ねんねまえオヤツを待って 箱入り猫 ベッドもあるけど箱がいいのね
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傷痕をなぞりあうように生きてきた 今度は傷を分け合い進む
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きざまれたしわ際立きわだきみ 我もそう共に歩んできたあかし だね
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緩やかに暮らしてるって気づくほど余裕がある日 柔らかな月
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なんにもない田舎と言われたこの土地も誰かの故郷かえりたい場所
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あの人も わたしも泣いた 背を向けて 同じゴールを目指してるのに
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この涙 いつか笑える想い出に 傷つけぬよう 傷つかぬよう
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「伝えたい」「いや見ないで」と揺れ動く これを恋だと呼ばないでくれ
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いつもよりと言いあなたはそうやって私のいつもを知った気でいる
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君ばかり 見てたよ 空は知らぬ間に 高く優しく 僕を見ていた
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