僕は死んだ  退部届は 濡れていた 匿名の僕を愛してくれ
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来世では猫になります 陽だまりの中に私を入れてください
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雨音で目覚めたはずが晴れていてわけがわからずきみに電話を
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あの冬を超えてきたけどだとしても 17℃雨 朝は寒いな
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波際の砂に混ざった貝殻と、プラスチック片、きみの頚椎
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夕立に濡れそぼつひとに差す傘も持ち合わせない独りぼっちの群れ
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かえろう、と僕の足つかまえた波きみのゆび?「なんだ、つきのひかりか」
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六畳を踏み荒らす西陽 背を向けて抱え込む膝に寄り添う陰鬱
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緊急で停車をしてる車内にて溜息を聞かぬようイヤホン
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素麺に寝そべるように海に居たい 沈みもせずに 溺れもせずに
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だんだんと短くなっていく会話に「、」を加えて引き伸ばす僕ら、
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人が猫のように見えていてもにゃあ、などと鳴かなければごまかせる
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医者が言う 128分臨終です それがどうした お母さん起きて
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虫かごのフン片付けなきゃいけないなら僕は標本が良かった
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鏡のごと我を映すオフの液晶テレビ 春冷えの部屋 外は花流しの雨
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君去りて 今なほ探す掲示板に 君の名札と優し微笑み
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夕焼けに 陽の光さす 祖母の部屋 ふと思い出す 優しき笑顔
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あの時にあんなのだった男の子 きょうはチャペルで花婿となる
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日没の青に吸い込まれる水の戯れ
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おかえりなさいを言ってくれる マッチングアプリ再インストール
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我が故郷 好きではないと言いつつも 日々映し撮る 富士の夕景
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綺麗だとなぞってくれた手の甲に油がはねる、長袖の夏
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誘われてゆくバッティングセンターで表情だけは強打者のオレ
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早苗饗(さなぶり)に田植え歌の演習を乙女するなり麗しきかな
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二杯分注ぐ紅茶の渦のなか小匙半分の吐息を混ぜる
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疑問符を片っ端から搔き集め吞み込むほどに欲張りだった
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しだれ咲く天のむらさき乱れ髪 カーテン見上げ落ちゆくは我
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覆面の鳥たち囀る化かし合いアドリブショーロックアセンス六歌仙』 なぞる残像
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思い出を君にたくさん刻みつけ僕とおそろい苦しんでくれ
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今日こそは 今日中に寝る 決意だけ 日付変更線を超えてゆく
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