かえろう、と僕の足つかまえた波きみのゆび?「なんだ、つきのひかりか」
0
六畳を踏み荒らす西陽 背を向けて抱え込む膝に寄り添う陰鬱
0
緊急で停車をしてる車内にて溜息を聞かぬようイヤホン
2
素麺に寝そべるように海に居たい 沈みもせずに 溺れもせずに
1
だんだんと短くなっていく会話に「、」を加えて引き伸ばす僕ら、
2
人が猫のように見えていてもにゃあ、などと鳴かなければごまかせる
2
医者が言う 128分臨終です それがどうした お母さん起きて
4
虫かごのフン片付けなきゃいけないなら僕は標本が良かった
0
鏡のごと我を映すオフの液晶テレビ 春冷えの部屋 外は花流しの雨
1
君去りて 今なほ探す掲示板に 君の名札と優し微笑み
1
夕焼けに 陽の光さす 祖母の部屋 ふと思い出す 優しき笑顔
1
あの時にあんなのだった男の子 きょうはチャペルで花婿となる
1
日没の青に吸い込まれる水の戯れ
0
おかえりなさいを言ってくれる マッチングアプリ再インストール
1
我が故郷 好きではないと言いつつも 日々映し撮る 富士の夕景
1
綺麗だとなぞってくれた手の甲に油がはねる、長袖の夏
5
誘われてゆくバッティングセンターで表情だけは強打者のオレ
7
早苗饗(さなぶり)に田植え歌の演習を乙女するなり麗しきかな
2
二杯分注ぐ紅茶の渦のなか小匙半分の吐息を混ぜる
2
疑問符を片っ端から搔き集め吞み込むほどに欲張りだった
1
しだれ咲く天のむらさき乱れ髪 カーテン見上げ落ちゆくは我
2
覆面の鳥たち囀る化かし合いアドリブショーロックアセンス六歌仙』 なぞる残像
0
思い出を君にたくさん刻みつけ僕とおそろい苦しんでくれ
1
今日こそは 今日中に寝る 決意だけ 日付変更線を超えてゆく
10
たんぽぽの道に置き去りした夏の忘れられないあの日の「ごめん」
9
赤々と西日に光る窓があり中にいる人がそれを知らない
2
ライブ前黒い画面に僕たちが流すチャットはきっと追い風
9
恥ずかしく 母には言わず詠む歌を こっそり世界に発信してみる
4
反抗の気持ちもありて 今までは 手を出さずにいた母親の趣味
3
人生のよすがになる趣味あればなと 下手くそな歌詠むのはどうか
3