「好き」という ことを言葉で 表せない だから僕らは 苦しいのかな?
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人ひとり愛するだけの適量も知らずに割れた揃いのグラス
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本棚の文庫を五冊抜いておく (ここらは右心室に相当)
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お医者様夜寂しくて寝れないの ジェネリック恋人出しときますね
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カーテンを潜り抜け陽が右乳を照らす そっちに心臓はない
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幼き日「あの子がほしい」の忘れもの 言えないんだな十七になりゃ
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きみの爪指す月見上げ肩寄せる忘れられない忘れたくない
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独りであるために必要なものとして、他の人間・そこまでの距離
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皮下脂肪ぶら下げて ふと 湯上がりの 亡き母に会う脱衣場の鏡
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初夏の夕ぬるくて湿った風に触れ好きでも嫌いでもない君と
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漱石に挟まる栞「真くん」と 見つけてしまった母の青春
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夕焼けに染め上げられた草木たちの引き立て役に徹する わたし
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深爪でじんじん痺れる右小指その先にもう夏がきている
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午前四時頃目覚めた先の缶チューハイの生ぬるさに嫌気がさす
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胸の奥秘める野望は壮大で 悪役気分世界征服
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捨てられたあのテーブルが支えてた生活ってなんだったのかなあ・
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おそらくは親が死んだ日でもきみは魚をきれいに食べるから好き
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父母の 姿を隠す春の雲 見えずと慕う 黄昏の海
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高砂の 山の麓の学舎で学び嬉しき 学童の唄
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知らなくていいから絵や文字だけ観てて〝遺されたメモ〟を見つけるように
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ならべるとりんかくが浮かび上がるから遺物なの どんな◼️かいつか、
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眠るとき誰しもが視ては忘れたり等しく潜む超常現象
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膨大な時間が目の前ひろがっておそろしいから目を閉じる 覚める
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しかたなく結婚していた人たちの子の代なのだ、まだ、と思った
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放課後の理科準備室でハツを焼く君と同じクラスで良かった
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ジュブナイルと名付けられたマニキュアを小指に塗ってすぐに落とした
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あのときは猫を追わずに帰ったの だからなんにも始まらなかった
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五月晴れ 梅雨入り間近の青き空 このまま続きて夏来ぬも良し
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衣替え お気に入りのデニムシャツ 秋になったらまた会おうね
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階段の縁のゴムだけ踏み上る 息をひそめる癖が抜けない
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