夢の夢 さきはひなるや烏羽玉うばたまの 闇のうつつの押し立つなれば
4
あなたには別れたとして悪口のひとつでさえも言わないでしょう
9
ひつじ雲 緩衝材と見間違い 迫る別れの 我なればこそ
3
わが身体からだを成す細胞はぽろぽろと崩れてこの世の一部にもなれず
8
晴天を かき分けていく飛行機 その下で かき混ぜてるカラス
5
背水の陣で望みをつなぐようビールが待っているから勇気
4
春場所の千秋楽に導かれ居間に集った孤食の家族
13
イッペイの 続報あれこれ 要らなくて 気に掛かるのは ショウヘイのこと
17
確実に春は来ているお土産に艶めく被毛「ねこやなぎ」貰う
19
青色のスーツケースと手を繋ぐ さらば故郷よ また会う日まで
13
あたしには何にもないよ。欲しい本リストばかりが膨れる日々だ。
8
願わくば全ての人に安眠を、恋と罪悪すりきり一杯
4
菜種梅雨 春らし語感とうらはらの寒さに今日も着るハイネック
22
この世にて 尊いものは 人格と やっといまさら 気づいた次第
4
糸の切れた凧のように飛べよ、春 絆の糸は残り半分
11
目の中に 入れても痛く ない子だと 麻酔も効かず 痛い連発
3
夜中2時 外が明るく 空見上げ もう一日先 満月なりやと
13
バビロンの 正義はいつも 多数決 天の力は 義人を選ぶ
2
早咲きの 桜もそろそろ 散り始め 世の理も それの如しよ
6
時々は 己の姿 俯瞰して 目標定め 荒海進め
2
教会の ジェントルメンが 年老いて 未だ信仰 溌溂として
5
もう雨が止まなくっても冷たさを愛せるようにはなったんですよ
11
会おうともしなかったのに「会えなくて」という言葉を使う人たち
10
「覚えてるこんど会おうよ」純度100で僕は会うよ君の罠でも
16
納棺時 嫁の体に 我が母が 掛けるセーター 涙止まらず
17
ちま猫や だいじょうぶだよ ねこ母は 頭が痛く おひざも痛い(だけ)
10
おかあちゃん だいじょうぶかな まだおきにゃい? ちま猫ちゃんは おそばにいるよ
12
今ここに足りないものはなにもない見えないものもなにひとつない
6
ふた親を見送ってからは病院のドラマはちょっと御免被ごみんこうむ
18
月に行ったことがないのはあたしだけみんなは月の幽霊ごっこ
5