笑いじわ真顔になれば消えるけど若い頃にはだいぶ気にした
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踊り場の巨大鏡は映し出す 流れし時は四半世紀と
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白と青の空を残して蝶分かれ一匹は花一匹は網
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沸点か臨界点か八月の海と運河の中間地点
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繋がった蜻蛉運河をじわじわり海に向かうか逆流しつつ
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雨粒が 窓に当たった音を聞き 「雨が降ってきたよ」と 伝える幸せ
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台風が 来るというから 楽しみに 待っているのは よくないらしい
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曇り空 久しぶりだな 小雨降る やっと狂った 夏も終わった
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字余りや字足らずなるも良しと言うリズム良ければいいねにしたい
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裏階段上るだれかのかげをいまひとりじめする身勝手ばかり
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〈屠〉という字やがて葬らるる字なり夏の蝿集る場所もなくて
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一篇の詩は極まれり また画布をひるがえすのみ無名のひとは 
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耳許に 風鈴の音 チリリンと 熱帯夜ねったいや倦みて 空は朝焼け
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誰からか優しさを期待するよりも もっと自分を好きになりたい
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今日からはお米探しはしないのにやだやだ早めに目が覚めており
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やっとこさ軽い米びつ重くして肩の荷下ろせばキシキシという
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傘閉じて入道雲が過ぎてゆく胸中の子ら追いかけていく
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やれ凌げ傘服麦わら盾として天の熱槍暑気の大戦
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自転車で熱唱していた女子高生 すれ違うとき風を感じた
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玉子焼き端っこ摘まむ朝ごはん弁当持ちの学童おわる
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いつまでも若い気がする盲信に疑問符ひとつ付けた森高(千里)
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白い壁に 見える来月の家計難 歯磨きはいつもオート操縦
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猫様をいつかお迎えするならば潔癖症の改善必須!
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まつ毛上げ気分も上がった日であれど誰も気付かず何も変わらず
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灰色の空引っ掻いた白色の直線が黒い地面を濡らし広がり
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沓脱に跳ねるしずくが足に飛び雨戸立てゆく縁側の雨
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君恋し、想いは乱れ夢花火 逢いたき願い、今宵叶わず
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通勤の改札出れば天気雨 夏の終わりの香りが満ちて
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ほろ酔いに五句のグラスは小さくて溢れる泡に消えていく泡
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傷ついた羽を休める止まり木としての有給休暇申請/題『傷』
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