処暑とはいへギラつく日差と涼風のせめぎあふ庭におんぶばった居る
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ポケットにしまう指先夜色のインクで染めて傷を隠して
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テーブルの上無造作に横たわるゴーヤこんなに凶暴な見た目
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久々に字を書くために握るペン忘れる漢字動かぬ手首
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処の字だけ見ているだけでときめいた中二の夏は何年前だろ
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捨てきれぬ 後悔今も 忘れぬ 自分の弱さ 嫌いで泣けて
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拒否しても訃報欄へと載る友の面輪ひねもす脳裏を廻る
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魂の 入れ物ひとつ ぼんやりと  駅のベンチで 電車 見送り
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スピッツを「新曲なのか」と孫に問えば 「懐メロ」と返る ボカロの海で
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ぎゅうぎゅうの引き出し開けて哀しみを捨てよ無言の声が聴こえる
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花までも星に匂えり我に降る震えて眺む天の川かな
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路線図にうつる近くて遠い街 揺られ流されいつかその地へ
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傷つける側 より傷つけ られる側 幾度来たとて 選ぶは「られる」
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亡き人の 旦那のエール 十年後 次は笑って 飲めたらいいな
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夏の盛り一人暮らしの夜は更けておやすみなさいと侘しくつぶやく
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介護されおしりを拭かれて死ぬよりも 兵隊として雄々しく死にたい
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屋上で 夜風にあたり 星を見る 心を無にし 仕事に戻る
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突如きた!他人ひとの会話に噛みつき魔 啖呵切るより短歌詠もうよ
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亡き妻の チョット焼き過ぎ ハンバーグ 思い出しつつ マルシンを食む
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青森の医師不足の記事に爺医われ「老老医療」を実践せむと
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お街では 祭りと花火 楽しかろ 蚊取り線香 見ながらビール
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NHKラジオ第二をパソコンでながせば書斎で世界一周
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会いたいと 言えば言うほど 遠ざかる 夜のはざまで ただ君を呼ぶ
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三歳児 水に顔つけ練習させる中 妹ザブーンと潜って見せ
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「池とか空とか森とか眺めてみようよそんなに急ぐと疲れちゃうよ」 
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猫たちはやっと気づいた冷却のマットの良さに 夏も終盤
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僕たちが日々を必死に過ごすのは たった一度の人生だから
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「君は輪廻を信じているかい?」 「いいや、僕は信じてないさ」
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ありふれた日々を愛しく思うのは いつの日にか別れが来るから
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八月は こうも長いと思い知る 草臥くたびれ果ててパフェの夢見る
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