「大丈夫」 と嘘をついて 自分さえ 騙し苦しめ 綱を手放した
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少年に なれない少女 夢を見た 虫あみ持って 野を駆け抜ける
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ずぶ濡れの 子猫抱えた 少年は 遊具の隅で 虹を待ちわびる
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「死にたい」が 日課になって 早二年 いつになっても 来ぬ死神よ
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「あいにくと自由意志なる幻想を自ら選んだ気でいますので」
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もしも犬だったらあなたのその愛に応えられたと思うのですが
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紫陽花が頭のように傾ぎつつ誰かに蹴られるのを待っている
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あおぎみる太陽の塔その顔にいのちかがやく脈々となお
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希望とふ羽をもつ鳥たましひの奥処にありてひそかにうたふ
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何だって 夢中になれる 物あれば 日々は彩づく みな、励むのだ
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もしふたり そいとげてても しあわせか どうかはべつの もんだいでした。
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ヴァレリーとヴャレンティヌスとヴァチカンにヴァカンスにゆくヴァンパイアたち
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古代より 人の愚かさ 包み込み 魂宿す 縄文の杉
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もう少し 短命なら 君を好きになれるかも アルストロメリアよ
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友達じゃないつもりなのにはぐらかす 広い背中を見つめてた夏
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チャーハンとピラフの違いも分からずに三十五歳になってしまった
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好きなのか聞かれて二拍置き「たぶん」 ショートカットが斜めに傾ぐ
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ゲームして 配信やって 短歌して 休みの時間 いつも逃げてく
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遥かなる温もり求め想ひやる 幾夜重ね面影を待つ
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これ以上望むものはないからさ あの夏の日を私にください
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びっくりだ結婚記念日きねんびだねと言う夫 明日はきっと雪が降るぞよ
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君くれし言の葉想ひ起こさせば 瞬きすらも永遠に光れる
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夢であれ何度も閉じる瞼にも情け知らずの現とあした
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子が巣立ち手作り料理手抜き気味 久々肉じゃが、じゃがいも固し
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夏季研修 部活で出られず 涙飲む 息子の疲れを 案ずる母よ
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れているあの蜘蛛くもいと辿たどれたら わたしあいあやめてください
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「モテモテに なりたかった」 と 涙ぐみ 彼女は今日の 糧を吐き出す
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姫の真似 スカートの裾 手でつまむ 階段ひっかけ コケてられない
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箱買いのトマトのヘタは緑色子育てみたくそっと常温
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背に置いたてのひらにさえ気付かないあなたの闇の深さをはかる
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