コオロギに音痴なやつもおりまして私に愛を迫るんじゃない
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亀が鳴く世界にぼくがいないのは亀の甲羅の中にいるから
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手のひらに雨粒握り僕は行くクラゲみたいな月のない夜
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目覚めれば火星のことは夢になり火星の家畜が地球の社畜に
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だろう迷路だけどけれどもどの道の先はつづいてつづいてゴール
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詠まなくちゃいてもたってもいられない河野裕子さんの歌集を読んで
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ためらいも 溶けるように忘れてく 解き放たれた明日のわたし
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もう二度と脱ぎたくないですジェラートピケ この優しさに包まれたなら
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暴力に「非」を付けていく 日常の「非」を消していく 付けて消す日々
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あなたとはただ会釈するだけになる 今日は言葉を交わしたいのに
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陽射す日の鏡面としての地表が俯くひとにあつまっていく
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下向いているひとたちに「あたらしい顔よ」みたいに「あ」を投げている
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めでたしで終わる童話の本を閉じ再び開く、いまだめでたし
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痩せ細る貘がぼくを見つめててごめん悪夢は見ないし寝ない
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鳥になることが出来ぬと知った日に肩甲骨がぽきりと鳴った
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雨の夜ひとりもどったこの部屋の明かりをつけて灯火になる
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こんな親こんな夫婦になるものかあなたの背中が教えてくれた
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都合良く記憶書き換え無きことに不幸は自分で選んだあなた
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幸せに比べ不幸はバラエティ豊かというがわりとベタじゃない?
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巨大なるクマバチまん羽音はおとして窓うなるただただ恐ろしく
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暴力よ「非」が付いてくれ 日常の「非」よ消えてくれ そう祈る日々
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蝶と秋はかなきかたち舞ひてゐる硝子のなかのf植物園
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もんしろ蝶あげは蝶ふと指の先わの字とれの字われの字とまる
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この宙によせてはかへし不可思議なるあかるき蝶の日だまりつづく
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キッチンで 味噌汁作ると 思い出す 味噌は煮立てちゃ ダメという声
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どこみても 黒い顔して 項垂れる 電車の中に 枯れた向日葵
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だとすればこの茶葉ゆらすものは何?生死の海に浮かぶ小舟も
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休みの朝暇過ぎスマホいじっては筋トレをして部屋を見渡す
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天災は果たして神の声なのかそれとも地がうめいてる声か
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淡く匂う会わずの時を吾はあわみ泡と消えれば哀れ 身の錆
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