この冬も野山を駆けて山鯨ぼたんの花はまだ咲かせない
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黒服が運ぶケースにこの星の運命線がつながっている
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さくらんぼ いちごブドウに 桃パイン 今日も今日とて スイカを作る
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自分史は最終章から書きはじめる 大霊界での幸福な日々
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泣いているきみの背中を撫でる手が震えて少し痛みを分け合う
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あの人も 見てたらいいな この夕陽 例える言葉 見つからなくて
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ブーケトスとって私にくれた叔母さんは勇者のように微笑む
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「ほころぶ」は おんなのための 動詞語で 「ほろころび」は おとこの名詞語。
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「ムーチョ」の「厶」 そんなかたちの ゆりつぼみ 半日たっても 言いそうでいわず
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しんと澄む夜ハイボールの氷ひとつゆっくりゆっくりからん、と滑る
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チャンネルはそのままでまた人生も 愛も恋もわからないままで
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来世では赤ちゃんのほっぺになって すこしだけなら触らせたげる
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雷鳴に ねこのおめめが真ん丸に お外だからね 大丈夫だよ
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次はいつ還ってくるの宇宙塵にまみれた汚い雪だるまくん
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悩みなくただ毎日が楽しくて スキップしてた輝いていた
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柿吊れば渋の香清し風絶えて鳥鳴き空にヒコーキの雲
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夢見ればどこかの街にとばされて知らない人とアイスティー飲む
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愛も死も厭いてオーデン詩集閉づまたも失う人間の道
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水振って ベーグルすこしあたためて モチモチにする ふかふかにする
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ビュブブンとドップラー効果示しつつ眼の前過ぎてカメムシが行く
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霜置けば幾日いくかもあらじ菊の花折らば折りてむよし惑ふとも
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こちらから あ〜いう人っているよねと 向こうもきっと そう思ってるね
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卒業の頃にはきっと この場所も 居心地いいと 思えるように
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ゆっくりと終わっていけよ雪虫があしたの夜と告げているので
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発色の度合いを競う紅葉狩りSNSはアプリの見頃
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わたはら 血汐紅葉や 波の綾 うわつ風だに 吹くよしもがな
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海の中 手を離したら消えるのに SNSエスエヌエスの胸先三寸
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渡り鳥群青色の海越えるたとえ故郷が焼けただれても
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きっと嘘ホストクラブの看板と二世議員の選挙公約
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女子はほぼ紫色のランドセル列を見送り信号を待つ
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