風のが 秋を知らせる 夕べかな 越えるべきもの 川面に浮かぶ
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カミソリの 金具とれても けがなくて にどくりかえす 守護霊はいる /電動カミソリ
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ぬるいめの水風呂がいいゆっくりと焼き入れされて身体はとがる
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明日の朝まではなんとか生きてみよう年が越せるかわからないけど
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絡まった糸をほどいて繋ぎ合う 心はいつだってここにある
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はふはふとぬらめく赤い舌だけが血潮の熱を彼から奪う
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きみはまだ起きてはこない一杯の冷却水を飲み下す朝
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虚構げんじつはこのなかにある不凍液に深く沈んだサーバのなかに
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かじかんだ指先きみに触れてからその温もりを奪えずにいる
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蟋蟀こうろぎは針させ糸刺せつづれ刺せ 冬の備えを我らに告げる
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砂糖黍ザワワザワワと沖縄に 実りの秋の風のさやけし
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体には夏の名残なごりがまだあって 急ぐ秋風追い越されてく
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赤裸々に 猥談語る 先輩の 飾らない姿に脱帽です
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ふたりで一緒に見なかったDVDを片付ける朝一泊二日
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定年をとうに過ぎ今日逝く愛車 瞳のワイパー全開で送る
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気になった 古書の価格を 調べたら とんだ暴騰 財布絶叫
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どんぶりにうどんの滝を生む魔術 息子の前で箸は杖へと
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透明の箱は中身が見えるから僕のこころも入れておきたい
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山形の県歌の歌詞は最上川 唄はず聴かずに久しくなりぬ
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この夏の猛暑続きに彼岸花十月に入りてやうやく開く
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背戸の藪 枯木の梢に鴉いて声をかければ唖唖ああと 啼く
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沈丁花 帽子を飛ばす風に乗り 探してしまう透明人間
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木々の間をざぁっと吹いてセーターの真青の肩にとまる紅葉もみじば
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寂しいという言葉さえ知らぬ子の 孤独を乗せて 春月の舟
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手を摩り 入る書店の高揚よ 棟方志功にジャズの夢かな
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寝返りを打ったねこから「フゴ」という 鼻息漏れて おもしろかわいい
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晩秋の 人混み分けた先で待つ トドと握手し しかめる君よ
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温もりも 冷たささえも 泡のよう 掌のなか 雀の亡骸
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踏み分けて人訪ひ来やと驚かる積もる落ち葉に風わたる音
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風を巻き 背にした丘のハマヒルガオ 飛沫いた声を いつか教えて
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