耳鳴りは加齢ですから治らぬと淋しいなあと母は言った
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雨降りの五月の夜は冷え冷えとそこはかとなく虫が泣いてる
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うつ伏せになってスマホをいじっては休みを満喫している今日
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ぞうぞうと騒ぐ緑は神楽鈴てるてる坊主は山を眼差し
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なんですか? 仕方ないなあ 光あれ 興味ないだろ? そんなもんだろ?
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人が背を丸めて咽ぶさまに似て森の波打つ雨の乱数
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指だけがいつもセピアを奏でるのピアノは斧でずたずたにした
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オニユリのコサージュをして街へ出る誰も心臓撃ち抜かないで
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うずまきのキャンディーかじる白い歯はいつか入れ歯になるのだろうか
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難波江の蘆のかりねの夢のあと天を摩す墓碑ひしめき立つも
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「ほしくない?」少女が指をひっかけるビーチサンダル海ははるかに
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いつの世もやる方のない牡たちは「しょうがないにゃあ……いいよ」をさがす
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すこんすとん気持ちもよく腑に落ちたので あいつおどれは勝手に滅びるが
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ことばなどおぼえなければよかつたな薔薇咲きほこる庭にたたずむ
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死出の旅いつか必ずゆく道を そんなに恐れてどう生きるのか
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「辛い」と言う手首に一を斬り込んで「幸い」だと言うことにしている
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「もう少しもう少しだけここに居て」最終電車は過ぎているのに
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フッ化水素酸で口を洗いたい君の辛さが辛すぎるから
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遠景の少年の曳くくるまより白線いづる夏のグラウンド
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感情の延焼はなお人を灼きはるか燎原WWW.ワールドスリー
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きみを抱くよるのしじまにカーテンのふはりとうごく風はらみつつ
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もういっそ灰色だけを載せて欲しい血の色だけはもう見たくない
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紺色の夕日終わりの空伸びる皐月に僕は上着抱きゆく
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人生に刺激が欲しいもんだから日々にルビふり偶然うんめいと読む
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ひとりでも生きてゆける我ら故 たまにつどいて風に揺られて
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わがこころ千千にみだれてくすのきのなみきをゆけばあはき樟の香
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帰り路に 地虫の鳴きぬ か細けき声 沁み入りし 春夏の速水に
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ぱちぱちとまだらな拍手がするような不安に僕は怯えているんだ
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コンパスで描くみたいなお決まりのデートプランはもうやめようよ
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くす玉を開くみたいに羽根ひろげ またたいていくなないろてんとう
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