さんざめく月の光も甘やかにルソーの夢に見られ紅塗る
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風呂の中の扇風機 熱きゆでだこの 顔を乾かしている
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町を出る あの日写真に焼き付けた 山の青さが今は痛くて
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悩み事マジックテープで被せたら跡は残るが言葉は消えた
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電話だけ動画だけの二年間君の匂いは君の温度は
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貸した本ページの角を手折られて ヤツのニキビが増えますように
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たよりない日々の蒼さを濾過させる「また明日ね」の君のひとこと
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もし選べるのなら人の形にはならない ましてや美少女になど
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夕焼けがユラユラ赤く燃えていて何かが起こる前触れのよう
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帰れない ああ帰れない 帰れない いや帰らない 帰りたくない
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いちにいさん よんごおろくなな はちきゅうじゅう 小さな手のひら ガッツポーズ
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開いた窓 なびくカーテン 暗い部屋 心も体も虚空に溶けゆく
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配信のライブ観客定員超愛と情熱世界をかける
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秋だから 秋じゃないけど 秋っぽく アップルパイの話をしましょう
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パンダ見に富士へゆきたい各駅で三十五円の思ひ出触れに
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きみが鮮やかすぎたので背景ばかり見てた午後驟雨の脰夏宿り
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手繰り寄せ探って触れる過去の日が未来みたいに新しく光る
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海を知る少女がわれに風を編みいつも両手を広げていたり
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十三夜ふちの欠けたきみの茶碗黒い扉の鍵を探して
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のちの月散りとどまれる花なれば欠けし二夜ぞきみとすまばや
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追憶は風呂の鏡のごと曇りお湯の向こうにきらめく死者よ
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薄野すすきのをすすきのに変え私たち膝を抱えて街に眠れり
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まぁちゃんに似たミキちゃんが好きだったキャンディーズの歌がきこえています
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この街にただ天使だけが生きている、あるいは天使だけが死んでいる
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機械すらいつしか人に似せてゆくように設定されている人
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なけなしの孤独 なけなしの幸福 なけなしの心で息をする
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それまでは知らなかったのに今となりゃ私の全て占めているのね
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もしかして明日も早出?そうですか雪降る前に死ねばさよなら
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下敷きがふたつ寄り添っても髪の毛は逆立たない
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鈍色のモバイルフォンは明時あかときに雪の国へと繋がる予感
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