カメラでは 収めきれない 人間の 心模様を 言葉で映す
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あきらかに翻りける葛の葉の、白妙にふく 丘の朝風
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走る影。一等長く、伸びる朝。猫バスみたい ワンマン電車
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艶やかな、つつじが落ちて、やってきた。ガタンゴトンは今朝も朱あけ
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潮引きぬ。朱き肌えの岩原に、海のスコアを、辿り歩けば……
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4月に取り残されたように降る 少年時代の春雪の跡に 突如訃報が届きぬ 
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カッターで腕に刻んだ五線譜を紅く滲んだ音符が滑る
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小数点以下の感情四捨五入なんてできずに黙りこむしか・
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いくたびも買い直している手帳こそ迷える人生への寓意である
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ひと回り小さい奥さんのとは違う 僕の指は君と同じサイズ
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肌寒い六畳一間に忍び寄る泥棒みたいな夜明けの光
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きみは光きみは太陽きみは熱僕は焼き尽くされるのを待つだけ
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遮光カーテンの 隙間から漏れる わずかな光が 怖くて僕は 眠れずにいる
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人よりも大事にされる猫がいて、少し寒いが暖かい日だ。
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「一缶三十円で買った偽のコーラがあるよ、夏が来たって」
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マーラーのアダージェット 葬儀場 なんとなく安堵 果たせた約束
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旅立ちの棺に副へし萬葉集 母の愛でし歌栞挟みて
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わたしのに ならなくていい こっそりと隣で影を踏ませて欲しい
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だれもいない車内にアナウンス流れる もう少し遠くへ参ります、と・
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可溶性 潮解性あり この私 涼しい場所に置いてください
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ラザニアが美味しそうねと笑う君 確かにうまいがそれは躑躅アザレア
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さよならは胸の水面に降る雨のようで波紋がずっと消えない
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満たされたわけではないよ あきらめただけだ神社の枯れた朝顔
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君のことを案じて買った海色の切手シールも減らないままで
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「消えたい」 という気持ちだけがうず高く地層のように 固く積もって
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存在が形に残ってしまうのがこわいと泣いた 透明人間
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このドアを誰かが開けてみるまでは確定しない存在、私
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雨上がり世界がきらきらして見える誰にとってもそうならいいな
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信号に何度も引っかかった日はその後きっといい事がある
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饒舌に 語る私に 明日はなし 連休前に 老害ありや
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